マギンティ夫人は死んだ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)マギンティ夫人は死んだ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
(2003/12)
アガサ クリスティー

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評価 4.7

これまたテレビドラマを見たので久々の再読。
ただ、これはとてもテレビドラマが原作に忠実であったように思う。
忠実通り越して、原作を読んでももうドラマしか思い浮かばないほどのような気も・・・・

マギンティ夫人が死んだ、とただ言われても、私たち日本人は
(はあそうですか・・・)
ぐらいなのだろうが、れっきとした歌らしい。
「マギンティ夫人は死んだ
 どんなふうに死んだ?
 あたしのようにひざついて…」

この歌の中のマギンティ夫人と偶然同じマギンティ夫人が殺される。
彼女の下宿でお金を滞納している若者が殺人犯として逮捕され死刑目前だ。
けれども、捕まえた刑事がどうも腑に落ちない、彼は本当にやったのだろうか。
殺人を犯すほどの人間があんなに自信がないものだろうか。
そしてポアロに依頼するのだ。

このやる気のない擬似殺人犯男ベントリイが、いらっとする。
自分がやってないのに騒ぐでもなく体温が低い男だ。
友達もほとんどいないらしい。
母と二人で住んでいてその母が死んで一人で住むことになったらしい限りなくマザコンっぽい男だ。
刑務所にいるにもかかわらず、自分じゃないと言い張るわけでもなく、でもだからこそ、この体温の低い男が冊事犯ではないと思う刑事がなんていい人かと思った(同時に会いに行くポアロもまたいい人)
なんだってこんな男のために一肌脱ぐのかとも思ったが、この男のためでもあるが真実のためでもあるのだろう。
そして面白いと思ったのは、こんなしようもない男にも、ふっと心揺さぶられていた女性がいたのだ(というのがポアロとの会話で見えてくる)
ぽっと顔を赤らめる冤罪のベントリイ君が可愛らしく思えてくるのが不思議だ。

最初のうち全くマギンティ夫人が殺される理由なんか見つからないように見える。
彼女の職業は雑役婦で、つまり人様の家に行って床を磨いている職業だ。
(決して身分が高い職業ではないと言うのが原作ではあからさまに書かれている)
でも段々話を聞いていくと、彼女が
・何にでも首を突っ込み
・日曜新聞が好きで(ゴシップっぽい新聞)
・人様の家の引き出しを勝手に開けたりする
そういう女だ、と言うこともわかってくる。
加えてこの村の人たちの誰も彼も胡散臭いことと言ったら・・・


中盤で日曜新聞の切抜きが出てくるところがとてもよい。
(これがドラマではたった2人になっていた。)
あの人は今、のような特集で、4人の残虐な殺人犯らしき人たちがどこに行ったのか、という話をゴシップ仕立てで出しているのだ。
ここから事件が展開していき、もう一人殺される人が出てくる・・・・
ただ、この4人の殺人に関係する人たちそのもの、もしくはその人たちの子供や関係者と、今現在村にいる人たちの年齢と重ねあわせるのが、
・どういう犯罪があったのか
ということと
・年齢が何歳ぐらいだったのか
というのを両方把握しなければならないので結構大変だった。

誰にでも触れられくない過去と言うのがある。
そこに触れられる時にどういう行動をとるのか。
そのあたりもとても細かく描写されていて面白く読んだのだった。

(余談だが、この話にはミセス・オリヴァーが出てくる。
個人的にこの人が出てくると話がもたっとするのであまり好みではない。)

以下ネタバレ
・ポアロは、名前が男女共有の名前ということから
生まれた子供が女の子と思い込んでいた全員(読者も含めて)を裏切って男だと見抜く。

親子、と思っていた母親と献身的な息子が偽者の親子であった。
そして、母親は擬似息子が犯罪者の息子だと言うのは知らなかった。
息子は自分の殺人者であろう母親の写真を持っていたのが命取りとなる→これをマギンティ婦人に見られる。
一方でマギンティ夫人は、この写真で、息子の母親が殺人者であるとは思うのだが、この写真の正体を擬似母親の若い頃の写真であると勘違いする。
だから、殺人犯はローラ・アップワードと思うのだ、なぜなら息子の母親なわけだから。(このあたりが二重の錯誤)