2014.02.05 混沌ホテル
混沌【カオス】ホテル (ザ・ベスト・オブ・コニー・ウィリス)混沌【カオス】ホテル (ザ・ベスト・オブ・コニー・ウィリス)
(2014/01/24)
コニー・ウィリス

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評価 5

(ああ・・・未訳のみの編集ではないのか・・・
その経緯は解説にあるが、ばらばらばらばら出ていると読者は非常に散財する。
これが本当に最後だろうね、と思いつつ信じて買うしかない。
とは言いつつ、ファンなので出たことは寿ぎたいのだが・・・・)

笑いが合う、それもくすくす笑いが合うというのはこんなにも楽しいことか。
コニー・ウィリスの話を読むといつもそう思う。
そして一瞬どたばたに見える話が後半きゅっと収束していく感じの面白さ、思いも寄らない方向からSFに入り込みそこから思わぬ方向に行ってくれる楽しさ、を味あわせてくれるのも、さすがにSF界の女王らしい。
これは、長編でも短編でも変わりない。
どちらも彼女の良さが思い切り出るような作品になっていて、しかもマンネリではないのでいつも新しい驚きと感動をこちらに呼び起こしてくれる。

どの話も改めて読んでも大変面白い。
まれびとこぞりて、は、歌が今ひとつわからないので(聖歌)、面白さが私に多分半分くらいしか伝わってないと思うのだけれど、それでも面白い。
宇宙から来たエイリアンアルタイル人は何をしても動かない。ただただ立っているだけだ。
睨みつけているだけのエイリアン。
彼らの動いたある一つのポイントがあるのだが、それが「何か」と言うのを探していく右往左往の地球人が笑える。
そして、その「何か」を発見するのが、ある睨みつけている自分の叔母さんがなぜ自分には睨みつけがあり、別の人にはプレゼントをくれるまでの気持ちになったか、という、実に身近なところから、真理を見出すというところが非常に面白い(これ、ミス・マープルの謎解き方法に似ている。自分の身近の村の誰かを思い出し、そこから事件を解決する)

混沌ホテル、は、もう映画と量子物理学会が入り混じり、ホテルがぐちゃぐちゃになっている。
その会場で右往左往していく様子が、長編の航路の右往左往ぶりを思い出す。
この最後の方のカオスっぷりがあまりに強烈で、読んでいて眩暈がするくらいに面白かった。

女王様でも、は最初、誰が誰の母親か、誰が誰の義母か、誰が誰の子供か、ばらっと出てくるのでちょっと戸惑う。
けれど読み進めていくうちに、女性ばかりが出てきて(途中で助手の男性が出てくるが途中退場)、これは女性の生理の話だということに気づかされる。
生理を人工的になくすというのが普通になっている世界。
ここで、あえて生理をそのままにという運動に共感しそこに入ろうとする娘を持つ親の心理状態の顛末を描いている傑作だ。
話し合いが何しろすさまじい、特にイラクから駆けつけた義母がすごい迫力だ。
そしてラストのまとまり方の見事さ、オチの(オチといっていいのなら)素晴らしさが特筆できよう。

インサイダー疑惑、は、占い師とか呪術師とかスピリチュアルなものを暴く職業の人のところに、思い切り美しい「元」女優がやってきて活躍する。
この話、外側が暴く話なのでそこはそれでとても楽しめるのだが、実は恋物語でもある。
途中で女優が占い師と結託しているのではないかと疑心暗鬼になる男性の心がまるでライバルが現れ嫉妬に駆られる男のようだ。
恋の話であってラストもとても美しかった。

魂はみずからの社会を選ぶ、は笑った笑った。
これは、エミリー・ディキンソンの詩を元にとんでもないギャグをかましていく。
謎に包まれたディキンソン。
変人とも言われていて隠者のような謎の生活をしていたディキンソン。
この話も面白いのだが、ラストのコニー・ウィリスの解説にも大爆笑していた、私は、ディキンソンが単に失恋で引きこもっていたと思っていたから、この視点って笑えるのだが、わかる、とても私もわかる。

相変わらず丁寧な大森望さんの解説もためになった。