2014.02.24 人喰いの時代
人喰いの時代 (ハルキ文庫)人喰いの時代 (ハルキ文庫)
(1999/02)
山田 正紀

商品詳細を見る


評価 4.9

大変面白く読んだのだが、帯が「連作の最後の章に待つ大仕掛けにあなたは必ず驚愕する」であって、「最後の一章で明かされる前5編全てを覆す驚愕の真実」であって。ここがどうなのだろう、と思った。
私もラストの章では驚いてよく出来ているなあ・・とは思ったのだが、これって驚愕を別方向で考える人が多くなるのではないだろうか。
予断を持たせるのでないか。
このタイプの推理小説が好きな人にはこの帯は○であって、こういうタイプが好きでない人にとってはこの帯がかなりの誇張と感じてしまうだろう(最後の一文でひっくり返す、みたいのを期待している人には特に)

必ず出てくるのが
放浪する若者二人の
・呪師霊太郎(しゅしれいたろう)
・椹秀助(さわらしゅうすけ)
だ。
この二人の昭和初期の事件に遭遇しその謎を解いていくという趣向になっていく。

この話、レトロな雰囲気に満ち満ちている。
なんせ冒頭の「人喰い船」は東京からカラフトに向かう船の中の変死体がある、時代は満州事変から数年した後というのだから1935年あたりだろう。
文中に「東北地方で身売りがある凶作」とあるくらいだから、時代も知れるというものだ。
この話、あるトリックがとても面白い。
以下ネタバレ→人の入れ替わりのトリックがある。ほたて貝を手に握り締めていたのは木箱につめられていたので。
しかも死体が握っていたものまですら、とても重要なアイテムになっているのが優れている。

「人喰いバス」は小技がきいていて私が大好きな作品だ。
ある所でバスから突然5人が消失する謎。
その5人のそれぞれの思惑があり、なぜバスがこんな風になったのかといういきさつが納得できるし読ませる。
更にこの話の面白さは、ある人の性癖が大きなポイントになってる所が面白い。
以下ネタバレ→前半の方で勝手に人の(秀介の)宴席に上がりこんで飲み食いする卑しい霜多の姿が描かれている。心中しようとした男女が入れておいた毒薬入りのビールを勝手に飲み食いして霜多は死んでしまうのだ)

「人喰い谷」は怖い。
三角関係の話でまぎれもなくあるのだが・・・
そして怖いのは奥さんの最後にやったことの怖さだ。
二人が谷底に沈んでしまった真相とは・・・
以下ネタバレ→三角関係といっても、女性をめぐる(奥さんをめぐる)三角関係ではなく、男性同士が愛し合ってしまい、そこにはじかれた奥さんの復讐劇といったところが読ませる。奥さんが雪の中の目標を山中のヒュッテのランプを持ち出し別の場所に設定して、そこに突っ込ませたと言う・・・

「人喰い倉」は遊郭の幸(ゆき)に対する霊太郎の思いやりが素晴らしい。
前半特殊な建築法というのがキーになっているので、ここは面白さとしては微妙な感じがしたいたら・・・・
以下ネタバレ→雪は自分と結婚しようといってくれた男を信じていた、最後まで。その気持ちを踏みにじらないように霊太郎は真実を言わなかった。
が、真実は、男は自分の不身持から破談になったお嬢さんと雇い主の意趣返しで殺されたように見せかけた。
そのため自分を切ったかみそりは雪に丸めて飲み込んでしまっていた。だから雪が手についていた→ここを遊郭の幸は、「雪」で自分のことを思ってくれていたのだと勘違いしたまま過ごす。


「人喰い雪まつり」は、子供の紀子の姿が最後目に浮かんでなける。
雪女の物語、氷を使ったそりの物語が哀愁を誘う。

「人喰い博覧会」はこれまでの全てに対しての返歌のような物語だ。
ここで話は大きく反転する。過去と現在が交互に出てきて、現在ではもう秀介も年老いている。
そして、O市がここで小樽市にくっきりと出てくる。
更に今までの物語で出てきた人達が、微妙に違う名前で出てくる出てくる。
過去部門では昭和12年,小樽「北海道大博覧会」で、「放送塔」から死体が降ってきてそして現場は密室状況という事件が霊太郎と秀介の目の前で起こる。
現在でも秀介に親切にしてくれた女の子が死ぬと言う事件が起こる。
最初はこのくらいしかわからないのだが・・・


以下ネタバレ
・この物語、最後の話を除いて創作であった(本当の話が内包されながらも)、というのが最後の章でわかる、ここで一気にO市が小樽市と限定され、今現在の年老いた秀介の周りに起きた殺人事件(?)と過去の秀介と霊太郎が遭遇した事件とが交互に語られる。
・最後の話で一気に本当の物語が語られる。
・過去秀介がどういう人間でどういう行動をしていたかというのが最後の章で語られる。
・真相を見抜くのは遠くにいる霊太郎。