2014.04.06
穴
(2014/01/24)
小山田 浩子

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評価 4.4

穴。
突然日常に開いてしまった穴。
これが、何かの象徴なのか、それとも心象風景なのか、わからない。
が、この話、「絵」が浮かぶのだ、そしてぐいぐい読ませてしまう力がある。
わけわからないだけに、誰かと話してみたくなる小説だ。


気づきにくいが奇妙に歪んでいる人達の造型が面白い。
話全体をみてみれば単純に
「無職になってしまった妻が、夫と一緒に夫の実家の隣の家をただで借り受けそこに住むことになる。
はたから見たらラッキーな話だ。
ただそこは田舎である、文化的な施設など何もない、更に妻は運転が出来ないので自転車の範囲内でないと動けない。
でもさして困らない。
新しい職は探しているが切羽詰ってない。
姑もいい人っぽい。
更にお祖父さんもいるがこの人も悪い人ではない」
というどこにでもあるような普通の家族の物語っぽい。

けれどよく読んでみるとこの家族が歪んでいる。
・穏やかだが、食事中にも携帯を手放さず何事かを打ち込んでいる夫の奇妙さ(一体誰と?どこに?投稿?)
・振り込んでくれと言った額以下のお金を渡し、そこまでは勘違いと思ったが、返すお金もまた少ないと言う姑(ボケなのか?意図しているのか?)
・いきなり庭に出てきた義兄と言う人間、この人間は一体本当に実在しているのか、誰も言わなかった人間だから(幻想?それとも本当に隠れていた?)
・一日中水をまいている穏やかなお祖父さん(水を一日中まいていても誰も何もとがめない奇妙さ。ボケか?)
・隣にいるらしい、主人公を穴から救ってくれた女性(なんだろうこの人は?)

・・・
途中に黒い動物がいて(これも何かの象徴?)そこに穴があり、その穴にすっぽり落ちてしまう。
そこに偶然近所の女性が通りかかり救ってくれる。
後半になって見えてくる、この穴にかくれんぼをしている小学生たちは一体何なんだろう。

非現実と現実が交錯して、新たなものを生み出した、そういう作品のように思えた。