首折り男のための協奏曲首折り男のための協奏曲
(2014/01/31)
伊坂 幸太郎

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「大人になっても人生はつらいわけ?」

評価 5(飛びぬけ)

抜群に面白い。
伊坂幸太郎のいい部分が全開になっているような作品だ。
どれを読んでも、どの言葉を読んでもぞくぞくと楽しく、そして軽妙な会話のやり取りに目を引かれる。
加えて、またしても黒澤、が出てくる。
多彩な芸を次々と繰り出されて、ノックアウトされた。

首をこきっと折ってしまう男。
7つの物語が収められているが、扉の裏にあるように首の頚椎が七つあるということでそこかららしい。

この話の中で、合コンの話はある合コンの話だが、おしぼりの話すら笑えて楽しい(おしぼりのこの用法といったら・・・)
そして、途中である人間の正体がわかった時の思ってもみなかったやられた感といったらどうだろう。

最初の首折り男の周辺も非常に読ませる物語だった。
近所の人(若林夫婦←あとで「僕の舟」で若林夫婦の後半が描かれている)が自分の隣のアパートにいる男が近頃の犯罪者首折り男ではないかと疑っている。

それと、大男の大藪と言う人間と気の小さい小笠原稔という男が二人そっくりらしく二人が混同されている。
(大藪はおそらくは首折り男であって、時空のねじれとか言っている。)

またいじめられている少年中島翔が出てくる、彼は中学生仲間と先輩からカツ揚げされている、いじめられるきっかけは幽霊がいるかいないかというやり取りだった(これがラストになってきいてくる)

大藪は殺した後、死んでいる。
その場面に小笠原稔は遭遇している。
そしてその呆然とした状態で中島翔のいじめの場面に行き、棒をやけになって振り回しいじめっ子を退治する。
死んだ大藪をテレビで見た翔は、大藪の幽霊だと思い、友人に幽霊がいたと仲直りする



自分の息子を車の事故で轢いて平然と暮らしている女性を思わず殺してしまったと言う男が刑事に独白している。
そこに行き着くまでの自分の心情を。
犯行に使ったのは小刀で、持ち主は偶然であった小学生で、彼が両親がいなくて祖父母に育てられていて不憫な生活を送っている。
しかしキャッチボールの約束を彼とする。

ところが、これは刑事ではなく、首折り男だった。
なので、自分のせいにして、お前は普通に生きろと諭す。
なぜなら、首折り男が小さい時にキャッチボールの約束をした人間がまさにこの男だから。
キャッチボールにいってやれと諭す←時空のねじれ


自分の働いていた時の一つのロマンス。
それを若林絵美は大切に思っていて、初恋は、遊園地で迷子になった時、もう一人迷子になった男の子だった。
真剣な4日間だけの恋は、銀座で殴られた男を偶然助けたことから始まるものだった。
彼を探して欲しいと黒澤に依頼する。

これが両方とも、今寝たきりの、のちの夫だったということに気づく。
この若林は、最初の物語の若林から十数年経っている


クワガタを飼いながら彼らの観察をしている作家。
自分の妹が義父母の介護を押し付けられた挙句離婚されそうになっているので、なんとか旦那の浮気を暴いて欲しいと黒澤に依頼する姉。
塾で猛烈ないじめにあっている中学生。
クワガタの世界に、人間が手を入れるとそれは神の手だ。
中学生のいじめをしていた男の子が、ある時に、ひょいと何かにつかまれどこかで頭をやられてくる。
浮気相手と温泉場の上から落ちて旦那と浮気相手の二人とも死ぬ。
これが神の手か。)



テレビ業界の一端にいる久喜山。
彼が脅迫ともつかない依頼を黒澤にしてくる、自分のところになぜかあった高額な絵を元の持ち主に返して欲しいと。

ビデオを逆周りにさせる作戦。
この話自体、逆になっている。
久喜山に荒らされた蕎麦屋の息子はこれで救われる。
息子は、高名な画家が扮していた路上の似顔絵描きで似顔絵を描いてもらっていた


山家(やんべ)清兵衛さんの話。
伊達政宗の家臣が正宗の子供と一緒に新しい土地宇和島に行く。
善政をするのだが、それに恨みを買い殺される。
と、にわかにその反対勢力が死んでいく・・・
この話と全く同じようなことが、ある会社の社長に起こっていた・・・

山家は実はその当主正宗の息子に暗殺されたのではないかと思われた。
そしてこの話の中でも、当の社長本人が心霊写真になって現れた年長の亡くなった部下、を殺したのではないかと思われる