三谷幸喜のありふれた生活 12 とび三谷幸喜のありふれた生活 12 とび
(2014/04/08)
三谷幸喜

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評価 5

ああ・・・とびが死んじゃった!

なんで人様のそれも全く知らない人の犬にこれだけ思いを寄せていたのだろう。
とびがいなくなった、というのが一度もあったことのない私にもとてもショックな出来事だ。
なぜなら、三谷幸喜がそれはそれは、「犬との喜びの生活」を綴っていてそれがこちらの心に届いていたからだと思う。
子犬の時にやんちゃでどうしようもなかったとび。
引っ張りまわされていたとび。
それがいつしか落ち着いた犬に成長していた・・・そして・・・・
最後のとびについてのエッセイで、散歩中に他の人から声をかけられた一言がずっしりと心に響く。
きっと誰か(犬でも人間でも)との最良の時って本人は気づきにくいのだろうなあ・・全てのことに、と思ったりもした。

身辺のエッセイと言うのは難しいと思う。
ある意味自分をさらけ出すわけだし、ここでもとびとの別れ、とか実に個人的なことが(またそのあとの犬と「人間」との出会い)が、いわば公的な劇や映画の出来事の合間に描かれている。
三谷幸喜は、非常に自意識過剰の人だと思う。
それでもその文章が読ませるのは、そこはかとなく全体にペーソスのようなものが漂っているからだ。
自分を外から見る目、というのがいい具合に発動しているような気がする。
同時に他の人を俯瞰から見ているというのは演出家気質なのか、彼の気質なのか、それらが合わさって実にいい味を出している。
だからこれだけ続いているのだろう。

舞台でいきなり宮沢りえ代役の話、とか、大泉洋の台詞覚えの話とか、橋爪功(この橋爪功の分析はとてもとても面白かった)の話とか、役者の話が出てくるがそれぞれがとてもわかるし、興味深い。

映画の話もまたそれに関連した本の話も楽しい。
ダールのキスキスの中に入っている作品、この「目」でもう一度読み返してみたいと痛切に思ったのだった。