2014.05.07 夜明けの睡魔
夜明けの睡魔―海外ミステリの新しい波 (創元ライブラリ)夜明けの睡魔―海外ミステリの新しい波 (創元ライブラリ)
(1999/05)
瀬戸川 猛資

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評価 5(飛びぬけ)

夢想の研究を何回目かに読んでみたのでついでにこちらも。
こちらの方が私はよく読んでいると思う、本がぼろぼろだ(保存用もあるので安心しているが)
これまた傑作中の傑作。
自分の知識をひけらかさず、優位感を相手に与えず(圧倒的に優位にもかかわらず)、しかもわかりやすい言葉でこれだけ面白くミステリを紐解いてくれている本というのは、もうないだろう。
これを読んだ時にも思ったが、今になってもまだない、と思う。
やや面白いなあ・・・と思うミステリ評論はあるものの・・・・

改めて読んでみて、作者は江戸っ子なんだと思った。
江戸っ子の歯切れの良さ、自分が好みじゃないものをどうして好みじゃないかを明確に述べる、ダメなものはダメだ、という潔さ、時折のお茶目さ、奥にある真実を見つめる喝破具合、などが散見されてそれはそれは読んでいて楽しい。

この中で最後の一撃の三作品はこれを見て全部読んだことを思い出した、
どれも一度読んでみて驚愕してそのあともう一度読んでも再読に耐えうる一撃だ。
特にハマースミスのうじ虫は、この時点では絶版でそれはそれは苦労したものだが、このあと再販されたのがなんとも印象深い。

Yの悲劇論も非常に面白い。
ただの批判だけではなく(というのはよく見かけるのだが)、それ以上のことを読んでいて得た気がする。
またカーへの偏愛、も実にわかる、これを最初に読んだ時にまだカーをそこまで読んでいなかったのでわかる部分とわからない部分があったけれど、今となると本当にわかる。

ルパン物の南洋一郎推しというのもとてもわかるのだ、これはもう読んでいて血沸き肉踊る小説になっているから。
「日常に潜む狂気」問題の「いやなことば」は今にでも通じる話だ、なんとこの惹句が多いことか。
なんと安直に使っていることか。


ジャン=バティスト・ロッシという無名の人の作品を語りながら、こちらが
(なぜこの作品を?)と思っていると
ラストの一行でそれこそ最後の一撃でこの人が誰なのかを種明かしする
「早熟列伝ー不幸な出発」
もミステリを読んでいるようだ。

縦横無尽に語られるミステリのあれこれ。
何度も言うようだが、本当に今のミステリを語って欲しかった。
たとえば、現在の北欧ミステリブームをどう見たのだろうか。