コンプリケーション (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)コンプリケーション (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
(2014/03/07)
アイザック アダムスン、Isaac Adamson 他

商品詳細を見る


評価 4.8

こんなにも盛りだくさんなのにあっさり読み終えられるとは。
しかも謎は色々まだ私の中で残っている、あれはどうだったのか、とか、これは何だったのか、とか。
しかしそんなことよりも、私はラスト5ページで本当に驚いた。
これが違った形の小説だったら意外にあたりをつけていたかもしれない。
でも何しろ迷宮につぐ迷宮を主人公のリーとともにさまよっていたので、全く驚きのラストであった。

父親を亡くしたリー。
彼が父親の遺品の中に弟のポールの死は裏があると示唆する手紙を見つける。
性格も何もかも違っていたポール。
彼は兄のリーと父を残してチェコに行ってそこで洪水で死亡したとされていた。
手紙に書いてあった場所で待っている、というヴェラという差出人に会うためにチェコのプラハに渡る・・・・


なんといってもチェコのプラハと言う街が生きているように目の前に繰り広げられる絵巻物の物語だ。
迷宮が目の前に広がっている。
ちょっとした路地、目を引く時計台、広場、そのような全てがあたかも実際と心と両方の迷宮にさまよわせるようだ。
弟が残した足跡を辿っていくうちに不思議な出来事もたくさんある。
・奇天烈なガイドブック「プラハ自由自在」(自分がいる場所に注釈がつくような)
・元刑事の出現
・繰り返し現れる歯のない少女

また考えられないような事件にも何度も巻き込まれる。
・振り払った瞬間に運河に落ちていく人間を助けようとして、自分もずぶぬれになる
・ソロスとともに乗った車の激しい自動車事故

そもそもの元凶となったポールが持っていたとされる(その後行方不明に)時計、ルドルフ・コンプリケーションの複雑な歴史があらゆる物語を通じて語られる。
ルドルフ二世が時計職人に作らせたという因縁の時計なのだ。
途中途中に入っているルドルフコンプリケーションにまつわる手紙とか、拷問場面とか、趣向も凝らされている。

この物語、幻想と現実が入り乱れ、一人称の「ぼく」のリーの視点で語られている。
最後、なんとかチェコを脱出してアメリカに帰ろうとするが、何者かが阻むかのように、肝心な時にパスポートも何もかもなくなっている苛立ちがこちらまで伝わってくる。

ただ、ややカオス過ぎるか。
これはこれでいい味を出しているような気もするのだが・・・

そしてラスト。
驚いたのなんのって!

以下ネタバレ
・最後父親の手紙をリーが見つけるところがある。
それはヴェラに(チェコから手紙をくれた女性)あてようとして出さなかった手紙だ。
それには

リーには弟などいなくて
リーは5年前に、チェコに行ったポールでもあったのだ。
つまり洪水で死なずに戻ってきたポールと名乗っていたリーは、心の中で二つに分裂していたのだった。
更に、
ヴェラには子供がいる。
その子供をリーは「自分の甥」と思ったが、実は「自分の子供」だった。
だから全員がリーを見ると「ぎょっと」したのだ、それは単に兄弟が似ていたのではなく、同じ人間が舞い戻ってきたからだった。


・しかし、リーはこの手紙を信じようとはせず相変わらず分裂している。