読まずにいられぬ名短篇 (ちくま文庫)読まずにいられぬ名短篇 (ちくま文庫)
(2014/05/08)
不明

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評価 5(飛びぬけ)

このシリーズ全体が素晴らしいのだが、これまた素晴らしいチョイスの作品群が目を奪う。
プラス、ラストに北村薫、宮部みゆきんの対談がついていてそれぞれの作品について縦横無尽に語っている、とはなんて贅沢な本なのだろう。
初めて読んだ作品もあるし、改めて読んだ作品もある。
どの作品も読み応えがあったし、また並べ方というのがとても面白い(特に百足つながりにはにんまりした)

この中で松本清張の張り込みは、宮部みゆきが言うとおり、ミステリではないものの、なんだか胸をかきむしられる物語だ。
ぱっと火が灯ったようになる女性の顔が目に浮かぶようだ。
これに対する倉本聰の戯曲は小さいところで原作とは違ってはいるもののこれはこれでと面白い。

『動物のぞき』よりー類人猿・抄、しこまれた動物・抄(幸田文)
楽しい。
これは抄、なので全部読んでみたいと思わせた。
類人猿が逃げた顛末、など類人猿の悲哀まで感じてしまった。


デューク(江國香織)
読ませる、そして好きな作品。
犬が死んで人前ではばかることもなく泣いてしまう女。
そんな女がその泣いて歩いているときに、ふと少年に会って、一緒に行動をする。
ラストの2ページがとても良い、これだけ短いのに余韻を残す。
デュークがまさか少年の形で戻ってきていたとは。
そしてデューク(少年)が言った言葉にほろっとした。




その木戸を通って(山本周五郎)
時代物苦手な私なのにこの作品にはひきつけられた。
大変好きな作品だ。
自分が望んでいた結婚が結局押しかけてきた見ず知らずの女のためにぶち壊される。
ごたごたあった末の結婚、があり、その後平穏に続くと思われるのだが・・・
ミステリではないのだが、ミステリのような雰囲気すら漂う作品だった、同時にSF要素もまた。
ある昔話を思い出した。
この話、単なる記憶喪失の女が木戸をくぐって元の場所に行った、とも取れるし、またSFのようにどこかの時限に消えてしまった、とも思えるのだ。
どこにいったのだろう、と余韻を残す。
昔話の「雪女」を思った。


からっぽ(田中小実昌)
なんとも不可思議な物語。
が、一回読んだら忘れられない物語でもある。
基地のタイピストとして雇われた女性・・・周りは大きな外人の人ばかりだ。
トイレの女性用がなくて行くためには大きな車を出してもらわなくてはならない。
と言う話かと思いきや、目は何だろう、途中で出てくる目は。
肘は何だろう、肘は。
そしてこすってもインキの消えない指はなんだろう。
触覚でこちらを刺激してくるような不思議な作品だ。


まん丸顔(ジャック・ロンドン)
ジャック・ロンドン・・ひどい。ひどすぎる。
こんな作品があったとは。
書いていてつらくなかったのだろうか・・・・
でもまん丸顔の人間を憎む(わけもなくと見える)気持ちはとても伝わってくる、殺したいまでに憎いと言う気持ちも。
しかし・・・
犬まで(というか犬を使って)爆弾で殺すとは。ぼん!

焚き火(ジャック・ロンドン)
これは打って変わって犬には優しい。
でも凍傷の足が痛すぎる・・・あたたたた・・・
何度も生き延びるチャンスがめぐってきて何度もつぶされて、というところがもどかしい。
主人公はもっともどかしい感じなんだろうが。
ラスト一行が光る。

蜜柑の皮(尾崎士郎)
大逆事件の話だが、読んでいて辛い。
が、死ぬ間際死刑になる間際のそれぞれのたたずまいが違っていてそれは読み応えがある。
蜜柑の皮、に集約させているところがにくい。

馬をのみこんだ男(クレイグ・ライス)
ちょっとしたお話で、笑おうと思えば笑えるのだが、笑うと不謹慎だなというような小話。
なんで色を聞いておかなかったのだろう、本当に。

蝿取紙(エリザベス・テイラー)
この話、好きだった、そして怖かった、思い切り。
タイトルからしてもう象徴的だ。
一人の女の子がバスの中で変な男に会う、それもお稽古事の通学のバスの最中に。
唯一庇ってくれるおばさんがいるが、降りてからも男に付きまとわれていた女の子におばさんは助けの手を差し伸べてくれる。
が・・・・
このおばさんがグルだった。

処刑の日(ヘンリィ・スレッサー)
弁護士が最初のお手柄をたて鼻高々というところから始まる。
死刑囚に一人の男をしたのだが・・・
ところがここに現れたのが・・・
この話も大好きだ。
最後のツイストが本当に光る。
あらわれたのは一人のおじいさん。
死刑になる前に死刑囚を助けたい、真犯人は自分だと言い張る(要は鼻高々の裁判が間違っていたと言う恐ろしい事実を述べまくるのだ)
なんとかごまかそうとするのだが、弁護士は結局この真犯人と名乗るおじいさんを殺してしまう。
そして、最後、このおじいさんが虚言癖のあるおじいさんで、いつも人を殺したといっていると言うことが判明する。
裁判は正しかったのだ。



『南島譚』より「幸福」「夫婦」(中島敦)
面白い!
幸福は偉い人と下っ端の人が夢の中で入れ替わる話、なのだが、不思議感が漂っている。

夫婦は、パラオの風習といってしまえばそれまでだが
とても面白いそしてハッピーエンドの話だ。

百足(小池真理子)
うっかり、ということがあるだろう、それにしても。も。
しかも名前がそれって。


百足殺せし女の話(抄)(吉田直哉)
うわー嫌な話で好きだ。
素手でムカデを次々に殺していく女ってどういう女だろう。
その女にご飯を盛られるのさえ嫌な感じが漂うのに・・・・
寺山修司というのがいかにもありそうな出来事なのだ。

張込み(松本清張)
これは、女(後妻で子供がいて旦那もしぶちん)が、日ごろの全く同じ生活を繰り返していて冴えない顔をしているのに、昔の男がきたことにより、ぱっと輝く様、が印象に残る作品だ。
最後、まだ間に合う帰るのには、日常に戻るにはと言い聞かせる刑事の言葉が切ない。


武州糸くり唄(倉本聰)
子供が更に嫌な感じになってるのと、これだと捕まえる側の様子に重きが置かれていると思った。

若狭 宮津浜(倉本聰)