2014.05.25 暗い越流
暗い越流暗い越流
(2014/03/19)
若竹 七海

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評価 4.9

苦い結末が待っている短編集だ、しかも極上の苦さが舌に残る。
シリーズ物の葉村晶の物語が二編入っていて、それも面白いが、私はその他の三編を大変面白く思った。
凡百のイヤミスとは確実に一線を画している。
若竹七海はやっぱりうまいなあ・・・と思ったのだった。
最後のツイストがあり、更にプラスのツイストがあるのがなんといっても読んでいて驚きに満ちている。

蝿男(葉村物)
ある所にずぶっと入っちゃったところが目を覆うばかりだ。なんでここに入り込んでしまったのか・・・・。
体感として伝わってくるのが恐ろしい。
蝿がなんといっても効いている・・・

暗い越流
この中でも光る一作。
殺人事件の犯人に山本優子という女性からファンレターが届く、というところからの展開が舌を巻くほどうまい。
最初、(このファンレターを出した女性は異常な人?)と思っているのだが、探している内に意外な事実にぶち当たる。
更にこの作品、ラストが苦すぎる(が面白い)
山本優子の父親が出した手紙だった。当の山本優子は死んでいた、車椅子の祖母に突き飛ばされてホームエレベーターにおりしもきていた台風による床上浸水(というのは父親談なのでこれまたどこまで信用できるかわからないのだが)。
そして、この取材を進める人間自体に問題があり、妻と娘が出て行ってしまったのは横暴な母がいるせいだった。床上浸水を聞いて閃いて・・・




幸せの家
ナチュラルな暮らしをしようというような雑誌の編集長が突然失踪し、更に死体となって現れる。
彼女は有能な編集長であったが、あることをしていたらしい・・・
編集長の裏の顔を交えて、捜索は進んでいくのだが・・・・
エコ生活、自然の生活、ナチュラルな生き方、のうさんくささというのを実によく描いていると思った。
また近頃の犯罪でこの犯罪があってもまったく不思議ではないと思わせるところが巧妙だ。
編集長は人の弱みを握って脅迫していた。
捜索しているこれまた有能な女性編集部員の一人は、孤児であり自分が実は色々出来るのは、一人の老婦人に取り入り彼女の家にさりげなく入り込んでいたのだった。


狂酔
海外の作品でこれと同じタイプの作品があるのだが、これも実によく出来ている。
ラストがもうたまらなく苦いが、読ませる力があり、冒頭からなんだなんだと思わず一気に読んでしまう。

アル中らしき男の独白、で始まる。
この状況下がわからない。
丁寧に話していて、誰かに話しているのだが場所もわからないし、相手もわからない。
そして何のためにこういうことをしているのかも。
このあたりぞくぞくするくらいに描かれていて、それでそれでとお話の続きをねだる幼児のような気持ちになってしまう。


しかし聞いているうちにここが地下室であり、閉じ込められているのがシスターであり、この男が「かつて誘拐されたことがある」人間だというのが判明してくる、更には周りを警察に包囲されているということも。
そしてその誘拐された遠い記憶の中の出来事を、誰にも言うなと父に口止めされたことも。
なぜかというとその誘拐した女の子、は、父が手をつけ妊娠させた女の子であったから。
父の実の子、を誘拐して地下に閉じ込めたが警察沙汰になった。
異母兄弟がいたということだった。
そして、ラストは、カレーの中に潜んでいた肉はかつての少女美奈子の肉・・・


道楽者の金庫
葉村晶者。
古本好きにはきっとたまらなく面白いだろうと思われる作品。
金庫の中にあったものは・・・