NOS4A2-ノスフェラトゥ- 上 (小学館文庫)NOS4A2-ノスフェラトゥ- 上 (小学館文庫)
(2014/05/08)
ジョー ヒル

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NOS4A2-ノスフェラトゥ- 下 (小学館文庫)NOS4A2-ノスフェラトゥ- 下 (小学館文庫)
(2014/05/08)
ジョー ヒル

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評価 5

最初から最後まで一気に読ませる作品だった。
それだけの力を持っていた。
ジャンルとしては、モダンホラー分野なのだろうが、タイトルがこれなのでとても誤解を受ける作品だと思う。
吸血鬼、の話ではなく、吸血鬼よりある意味もっとたちの悪い「あるもの」の話なのだ。

冒頭で、クリスマスランドを口にするマンクスという男の不気味さがまず語られる。
そしてヴィクトリアの家庭の物語が幕を開ける。
両親と一つの家に住んでいるヴィクトリア。
8歳の時、父からもらった自転車で、「なくしたもの」を見つけることができるようになる。
強烈に何かなくしたものを思うと、目の前に屋根付き橋が現れその先は、「異界」であったり「別の遠い場所」であったりするのだ。
全力疾走の自転車でそれを何度か繰り返し、なくしたものを次々と見つけてくるヴィクトリア。
そのあとは微熱と興奮と、そして当座は左目の奥の痛みが待っている・・・

以前あったらしい橋。
そして自転車で疾走し母と喧嘩をした後のヴィクトリアが向かった先は、橇の家だった。
ここに冒頭のマンクスが住んでいた、NOS4A2(ノスフェラトゥ)のナンバープレートを付けた車と一緒に。
彼こそが児童連続誘拐犯人のチャールズ・タレント・マンクスだった・・・


話の中にも出てくるが、ナイトライダーという以前テレビドラマがあった。
この中で、主人公の乗る車がしゃべりそして自分で自動運転し、印象深かった。
ノスフェラトゥの車がまさにこの車(ドラマではとてもいいことをする車なのだが)を彷彿とさせる。
後半、ヴィクと誘拐犯が連れて行った息子を取り戻すための一騎打ちになるのだが、このあたりでも息子のウェインが何とかしてこの車から出ようとしても出られない場面がある。
生きているような車、というのも一つの仕掛けだと思った。
またマンクスはただの誘拐犯ではなく、この世のものとあの世のものの境目にいるようなものであって、死んでもこの車さえ生き返れば(エンジンが入れば)マンクスもまた復活するということになっている。
だから車とマンクスは一体なのだ。


橋、というのも一つの象徴だと思う。
あちら側に行くような橋。
あちら側というのは、異界でもあるし死の世界でもあるし、実にここは象徴的だ。
橋がヴィクの目の前で浮かび上がってくるさまが実に読ませる場面だ。
もしこの話でなかったら、ファンタジーとして際立っているような場面だと思う。
そして橋を渡ることで見つけ物もしたのだが、実に重要な人物と出会うことになる。
それが図書館司書のマギーだ。
彼女の存在は非常に大きく、初めてヴィクの話をすべて理解してくれる重要な人物だ(そして後半になるまで重要な人物になる)
彼女も技を持っていて、スクラブルをすることにより、これからのことを占うことができる、その代償に言葉が詰まり、吃音になりながらも。

更にもう一人、孤独なヴィクの味方が、マンクスから逃れるときに偶然出会い一緒に暮し子供まで設けたルーの存在だ。
ルーがどんなに大きな人か(体も大きいが)、この人に巡り合えてどんなに幸せだったのか、というのが後半特にわかってくる。

狂気に満ちたマンクス。
異常な行動をするようにしむけられた子供の集団の恐ろしさ。
最後のほうはひたすら怖かった。