2014.07.12 華氏451度
華氏451度〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)華氏451度〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)
(2014/04/24)
レイ・ブラッドベリ

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評価 5

新訳だが、私の場合は、昔の訳より圧倒的に読みやすかった。
焚書と昇火、ここが一番違うところと言うのは最後の後書きにもあるけれど、確かに焚書はマイナスイメージが非常にする。
この本を燃やすのが当たり前の世界、ではそぐわないことなのかもしれない。

華氏451度とは書物が引火し燃える温度である。
この世界では、書物を焼き尽くす今で言う消防士と逆の意味の昇火士がいて、本があると言う通報があれば、すぐにその家を焼き尽くす。
本は忌むべき禁制品なのだ。


一見この作品は、叙情派のブラッドベリらしくない作品だ。
現代文明の風刺だから。
けれど、そこここに叙情性の高い部分があり、それが私がもっとも感じたのは、冒頭の昇火士モンターグがそもそもこの仕事に疑問を持つきっかけになった、一人の少女との出会いの場面だった。
ちょっと風変わりな少女。
この世界で言ってはいけないことをさらっと言う少女。
燃やす前にその本を読んで見たことがある?と聞いた少女。
しかしこの夢のようなふわふわした少女はいつしか姿を消す。
少女がモンターグに落とした一粒の疑念、それは、自分がやっていることは正しいのだろうか?という疑念だった。

モンターグが徐々に目覚めていく姿が実に読んでいてわくわくする。
ある家の本とおばあさんごと焼いてしまうと言う決断を迫られた時から、モンターグは煩悶し始める、より深く。

そして自分の家にも本を持ってくるのだが、奥さんは理解がない。
更に本の仲間をひそかに見つけ出していくのだ。

物語は本の中のみにあるだけではなく、読んだ人間の血肉になっていく。
そんなこともラストシーンで強く思ったのだった。