アンのゆりかご―村岡花子の生涯 (新潮文庫)アンのゆりかご―村岡花子の生涯 (新潮文庫)
(2011/08/28)
村岡 恵理

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評価 5

一人の女性の生涯として大変面白かったし、わからないところが全部埋められた、という評伝だった。
また知らないことをたくさん知ることが出来た。
労作、だと思った。
お孫さんが書かれているので、あまりに接近しすぎた評伝だと嫌だなあ・・・と思って読み始めたが、そこは適度な距離感があり、冷静な目があり、時折挟まれるきちんとした考証があり、ぐいぐい読み進めることが出来た。

これだけの本に沢山の写真が入っている。
これだけでも貴重で読む価値がある。
貧しい茶商人の家に生まれ、父の方針により東洋英和に入学そこで頭角を現し英語を生涯の仕事にしていく姿はとても読む者にとって眩しい存在だ。
途中、激しい恋愛もあり、また柳原白蓮との学生時代からの友情もあり、更にキリスト教との深いかかわりがあり、そして結婚、出産、子供のことで大打撃を受け、そこからどうやって立ち直っていくか、という女性の一代記でもある。

更に、村岡花子の生涯を見ていると、それはそれは文壇の女性達と交わっていたのがよくわかる。
宇野千代、吉屋信子、林芙美子、野上弥生子・・・・
プラス女性解放運動の人たちとも交わっていて
市川房枝が出てきた時には、村岡花子とつながりがあるとは思ってもみなかったのでとても驚いた。
加えて片山廣子、そして石井桃子(彼女の家庭文庫が村岡花子の家庭文庫と連動していたことも初めて知ったので驚き!)とそれはそれは綺羅星のような人たちと交流がある。

ラジオのおばさんとして親しまれた時期。
心温まる翻訳をしていた時期。
そして赤毛のアンのタイトルのでき方(直前まで違ったタイトルだったと言うのに驚き!)、赤毛のアンを戦中下で必死に訳していてそれが燃えなかった奇跡、と赤毛のアンは日本人の手に渡るべくして渡ったんだなあ・・・と改めて思ったのだった。遠く思い返して見れば、東洋英和がカナダ人の先生方というのにも関係しているので、正しい人のところに赤毛のアンは渡ったのだなあというのも思ったのだった。