2014.08.06 ライフボート
ライフボート (集英社文庫)ライフボート (集英社文庫)
(2014/05/20)
シャーロット ローガン

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評価 4.9

漂流物が大好きなので、これまたとても楽しく読んだ。
しかも心理小説の側面もある、本当はサスペンスというくくりになるのだろうが。

大西洋である豪華客船が爆発してそこから救命ボートが出る。
地獄のような脱出劇から何とか逃げ出した人々・・・
しかし定員オーバーのため、床からは水があふれたえず書き出していなければならない。
しかも食料は日増しに減っていく。
水は最初はあったが、後半は雨頼みになっている。
そこでリーダーとなったのが元船員のハーディーであった・・・


語り手がグレースと言う女性になっている。
更には、冒頭でグレースが裁判にかけられている、と言う場面から始まるので、彼女は漂流を生き延びたのだなあということはわかっている、とすると、なぜ裁判に?という疑念がわいてくる。

漂流中にそれぞれの思惑と人間性があからさまになってきて面白い。
当初はハーディーが一番知識があるので、彼に従おうという雰囲気が出来上がっていた。
最初のほうで海からあがろうとした人を叩き落す、子供を救わない、と一見非道なことをしたように見えるハーディーだが、のちのちになって彼の判断は正しかったことがわかる。
また食料、水などの分配も彼が取り仕切っているが、彼の希望に満ちた観測とは裏腹に、もし誰も助けに来なかったらということを踏まえて実にたくみに分けている、ということもわかってくるのだ。
が、途中で彼に対して不満がボートの人々から出てくるさまが怖いし、リアルだ。
極限状態なので何かに怒りをぶつけたくなっている人々。
男だけくじを引いて海に飛び込む人を決める、という場面も印象深い。

助祭がいるが、彼の紙への言葉すら胡散臭く感じてくる人々がいる。
更に頭がおかしくなる人、
子供を守っていて何一つ手を貸そうとしない人(この人は結果的に子供とともに助かる)、
叫ぶ人、
冷静な判断をしたがる(しかししてはいない)マーシュ大佐、
言葉が通じにくいイタリア人の一行
ひたすらグレースにすがってくる弱弱しいメアリー・アン
偉丈夫なハンナと常にハーディーに批判的だったミセス・グラントという二人の女性・・・・・

面白いのは、グレースが、どうして船に乗るという経緯がこの中で徐々にわかってくるところだ。
彼女は、ヘンリーと言う大金持ちと結婚したので豪華客船に乗ったのだが、ヘンリーと結婚するにあたって策を弄していたのだった。
だからこの小説、グレースの一人称で書かれているが、信用できないのだ、彼女の語り口が。
そのあたりが面白く読んでいたのだった。
彼女の本当のところはどうだったのか。
上昇志向の異常に高い計算高いグレースはどうやって立ち回ったのか。

そしてラスト、グレースらしい結末が出たのだった。

以下ネタバレ
・メアリーアンもグレースが殺したのではないかぐらいに思っている
途中でうるさくなったようなので。

・ヘンリーは賄賂を渡してまでグレースを助けてくれた。
そしてグレースと結婚するにあたり、苦悩の末幼馴染との婚約破棄をしていたのだが、実はグレースは用意周到に新聞で見かけたヘンリーに狙いを定め、結婚するべく彼の目の前で靴のかかとが壊れた「演技」をして彼の注意を引いたのだった。

・グレースは最終的に弁護士と結婚することにした、何しろヘンリーは死んでいるし、上昇志向の強い、更には働くことが嫌いで姉と同じような家庭教師業などまっぴらごめんなのだから。

・ハーディーの殺しにはグレースはもちろん参加していた、どちらかというと積極的に。