さよなら神様さよなら神様
(2014/08/06)
麻耶 雄嵩

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評価 5

本屋をうろうろうろ・・・考える考える・・・買うべきかどうか悩みに悩んで・・・・
そしてとうとう我慢しきれなくなって買った本がこれだ。
何しろ衝撃の結末の神様ゲーム、の続編なのだ。
けれど神様ゲームより面白くなかったらがっかりか・・・それとも絶対の面白さがあるか・・・このあたりが買うのを逡巡させた理由だ。
そして買って大正解、とんでもなく良いミステリだった。
良い、というのは語弊があるだろう、凄まじいまでの怒涛の展開にただただ酔いしれた。
爆風にあったような気持ちにさせてくれた。

まず最初にさらっと犯人がこれだよ、という小学生の鈴木君がいる。
鈴木君は同級生の男の子であり、転校生であり、人気者でもあるのだが、あっけなく殺人犯を聞くと教えてくれるのだ。
だから全ての話の冒頭は、・・が犯人だよ、という実にそっけない鈴木君の一言で始まる。
転校生で文武両道、しかも性格も良くみんなに愛される鈴木君。
女子に絶大な人気があり男子にも好かれているいわばパーフェクトな鈴木君。
皆から神様と言われている鈴木君。
一方で、淳の質問に(誰が殺したか)あっさり答える鈴木君の顔もあるのだ、悪魔はこの世にいないとか、自分がこの世界を作ったとか語る鈴木君もまた。
語り手も同じく小学生の、俺語りの淳だ。
淳は、同じ小学校で次々と事件が起こり、その事件の犯人を、自ら神様と称している鈴木君に聞くのだ。
そうすると、最初に書いたように、犯人はこれ、と何のためらいもなく指し示してくれる。


(自称)神様の鈴木君の論理が正しいとして(何しろ正しいと言う結論が最終的には出る)、校内に出来ている少年探偵団で謎を解いていく。
その前に鈴木君が神だ、神はありき、というのがもう前提にあるのだ、この設定も非常によく生かされている。

探偵団に集まるのが、数人の小学生だ。
鈴木君が犯人と名指した者は、ある人は誰かの身内でありある人は担任の先生であり、ある人はまだ見も知らない人だが、そのあと出てきたりする。
なぜ鈴木君が知ることが出来るか?
それは論理的に考えれば、何かの周辺情報を握っていてそこから類推する、なのだろうが(途中で少年探偵団の市部君もそれを指摘している。だから書いている側は確信犯)、周辺情報を一切言わずただただ犯人をさす言葉を言い、全体が突き抜けているばっと真相を示す言葉なので鈴木イコール神としか考えられない。
読んでいるうちにこの鈴木君イコール神という構図が何の違和感もなく心に入り込んでくる、このあたりもすごい。

そしてこれを正しいとして、探偵団の推理は始まっていく。
アリバイ、実際の経路、使ったもの、周りの状況と、探偵団は実際にその場所に行ったり、話を聞いたり、時系列を考えたり、それはそれは論理の組み立てを考える。
そして結果的に鈴木君の指定があってるようなのだが、それでも犯人が警察に捕まらないという人も何人もいて、最終的な判断は出来ないのだが、これが正しいという一つの回答が、導き出されるのだ。
この中で一番わかりやすく驚きに満ちていたのがバレンタイン昔語りだ、もう最後のところで驚きまくった。
この話のみ、冒頭で神の鈴木君が指摘した殺人犯が、全く知らない人、だったのだ。
ところが・・・・
そしてじゃあ鈴木君は間違ってたのか、という思いを私が抱いた時に(同時に作中の淳もそのように思うのだが)、とんでもない驚きが待っていた。

またそれについでの事件が心躍らせ、推理の積み重ねなども目を瞠るものがあった、バレンタイン昔語りがあったからこそ、次の比土との対決が意味あるものになり、最後のこれまた傑作の、さよなら神様に連なっていくのだ。
後半三編が前半三編から特にジャンプアップしていて読み応えがある。
前の三編があったからこそ、後半が生きる、影があって光があるというような構造の物語になっている。
後半は、語り手の桑町淳の物語にシフトしていくが、ここで、今までの小さな引っ掛かりがほどけていく。
最後の一編、悲しくて胸が詰まる前半部分と、ぱっと道が開ける後半部分、これも心をざわつかせる仕掛けがある。

心をざわつかせるミステリ。
そして私はこのようなミステリが大好きだ。
前作神様ゲームを再読したい気持ちでいっぱいだ。

以下ネタバレ
・淳、が男ではなく女だと言うのはかなり早い段階でわかる。
それは1章のラストで市部が男の目で淳を見た、というのが、普通に考えれば淳は女だろう。
もしこれが男だったら、市部は男を好きな男になるのだが、その部分はあまり思わなかった、なぜなら、淳が男の鈴木と話しているのを嫉妬する「女性群」というのがいるから。
男が男と話して、なぜ嫉妬するのか、というのが大きな取っ掛かりとなっている。
が、一方でそれならなぜ「俺」語りなのだろう。
ここが後半で明かされている、彼女淳をめぐる、男の闘争で一人亡くなっているから(そしてこの話が全てに繋がっているという見事さ)

・バレンタイン昔語りは、鈴木君が、川合を殺したのはその場にいないある一人の人を犯人だと指摘している。
その場にいない人、それは、「そのあと」転校してきた少年のお母さんだった。
このお母さんが、かつての淳を争って死んだという男の子川合(死亡している)を殺した人なのか。
川合と赤目という男子二人が淳を争ったという図式がここにある。
何度も何度も検証してみるが、なんだかしっくりこない。
そのうちに、そのお母さんは丑の刻参りを見られたからと言って、赤目を殺す。
じゃあ、鈴木君の言ったのは間違っているではないか・・・

と思ったときに、重要な話が出てくる、そしてそれは最初から目の前に提示されていた。
川合と赤目という少年二人は、「同じ産院で同日に生まれていた」
だから取り違え出産で、川合は赤目であったし、赤目は川合であった。
だから鈴木君の指摘は正しいと。