2014.08.15 私に似た人
私に似た人私に似た人
(2014/04/08)
貫井徳郎

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評価 4.8

面白くて一気読みした。
この小説は、「小規模テロ(小口テロと命名)が相次ぐ近未来の日本」が舞台だ。
そこには理想を掲げる熱く語る首相(現実にはだからいない、髣髴とさせる人はいるが)がいて、それを見ながら、小市民が色々考えている。
小市民の中でも、貧困層、中間層、富裕層と分かれいて、近未来ではあるけれどきわめて現代の日本に近い社会だ。
バブルがあった、その時に就職した人は実に楽をして就職して、その分裕福だ。
が、その皺寄せが下世代に来ていて、働けど働けど・・・の暮らしになっている。
就職活動をして、まじめにやっているのに100社受けても受かるところがない。
もしくは受かってもブラック企業で命を落とすことになる。
一方で、上の世代は、一流企業にもぐりこんで人生を享受している。
このあたりが非常にリアルだ。

連作なので、色々な人が出てきて、面白いと思ったのは、小口テロに至る人達が描かれていて彼らが、ネットには参加していてそこで安らぎを見出しているところだ。
SNSの中のサークルのようなところで、トベという人間から心温まる励ましをチャットでもらう。
このあたりも実際にありそうだ。
そしてトベの使い方が面白いと思った、組織と考える古い考えの公安、しかし現実はそこを凌駕している・・・
不登校、ブラック企業、就職難、人を助けない風潮、見てみぬふり、ネット依存そんな社会問題もはらんでいる。

巧みだと思ったのは、ある物語がこの中のある部分にぽんと入れられていることだ。
だからここ、時勢が→方向に流れているのだ、とばかり思っていた
ラスト、犯人がわかったときには驚愕したのだった。

・・・
一方でなんだかすっきりしないところも残る。
中途半端で終わっている感がする物語があるのだ。
・この首相の出番はこれだけなのか、放送されている人というくくりで出てくるだけなのか。
・公安の男が不登校の娘のスマホで、トベの文字を見つけ動揺しながらもスマホを解読した公安の男は最後に娘にスマホをいじったことを見破られる。
この娘に教えた人は誰なのか。
・教育ママの息子の言動は一体なんだったのか。彼もまたトベになる素質がある、またはトベと接触があったのか(私は最後までこの息子がトベだとばかり思っていた・・・・)
・ラストは読者にゆだねたのだろうが、これで終わりなのか。

以下ネタバレ
・トベというネット上の人物が話を聞いてあげていて、
更にはそこから小口テロを教唆しているということで公安は躍起となる。
組織的犯罪なのか、どうなのか。
ところが、実際は、トベという大元がいて、そこからねずみ講のように、子供のトベが何人もいてそこからまた孫のトベが何人もいる、という図式であった。だからトベと名乗る人物は大勢いたのだ。
大元のトベを逮捕しない限りはこれはおさまる気配がない。
(しかし普及しているのだから仮に大元トベを捕まえても
既に広がっているものは回収しきれないのではないか、各地にいるトベは(と私は思った)

・連作で来ていて、最後の話が
途中の「ヘイトさんという正義感の強い人を助けた人と繋がった女性、がトベだった」という真相がわかる。
このヘイトさん話は、さらっと連作の中に紛れ込んでいるので、そしてヘイトさんの死に方が漫画喫茶でみんなの見てみない振りで喘息の発作で死んだと言う話だった。彼自身は身を挺して、他の人を助けた過去があるのに(ここで彼女と知り合う)
そこに理不尽を感じた女性というのがいるが、私はこれは小口テロの背景のようなものの一つと思っていた。