しろいろの街の、その骨の体温のしろいろの街の、その骨の体温の
(2012/09/20)
村田 沙耶香

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評価 5

大変面白く読んだ。
読み始めたら止まらないくらいに一気呵成に読んだ。

性のことについて生々しく書きすぎ、というのを感じる人も多いと思う。
ここまで書かなくても、と思うところもある。
また生徒同士のクラスのカーストを描いている、というような側面もある。
目立つグループ、第二のグループ、第三のグループ、静かなグループ、そして誰にもさげすまれて可とされているグループ。こんなに厳しいグループがクラスにあり、そこで息を潜めるようにして生きている女の子達もいるのだ。

しかしこの話の面白さは、ある時期の女子の特有のけだるさ、のようなものを見事に切り取っているところだろう。
体温が常に上がっていて常に体がもったりしているような時期。
そして人と比べることで自分の位置を確かめる時期。
自分が自分がと自意識で固まっているのにそれを認めるのが嫌で、自分は何物とも違うのだというのを思いたい時期。
背伸びをしているのに背伸びをしている自分を否定したい時期。
人を見下しているのか、それとも哀れんでいるのか、憧れているのかなんだか自分の中で混沌としている時期。
このあたりを実に巧く描いた作品だと思う。
そしてそれを、この新興住宅街の街の白さと、開発途上で投げ出された街の奇妙さと、適度に都会で適度に田舎の中途半端な街の状況というのを、女の子の心と体の成長とともに描いている。
同時に男の子の心と体の成長も。

誰に心にも、規模は違うけれど屈折した自意識の強い結佳がいる。
そしてピュアな男子から成長していった伊吹もいる。
更には、なんとなくクラスでつまはじきになり最後爆発する信子もいる。
かつては女王のようだったのに強い者に迎合した若葉もいる。
ちょっと派手な学生離れした小川さん、もいる。
小説だからデフォルメされていて普通の中学生からは逸脱しているけれども、誰にもこの子達は存在していたと思うのだ、多かれ少なかれ。

伊吹という男の子がいる。
小学生の時は年よりまだほんの幼い男の子というイメージで屈託のないサッカー男子そのものだ。
主人公の結佳は、彼のことが小学生の書道教室からおおいに気になっている。
そしてキスの真似事を無理やりする。
学年が進み中学生になり、クラスの中でなぜか伊吹はトップ層にいて、みんなの憧れになっている。
でも一方で鬱屈している結佳のはけ口になっている。
が、伊吹もそれは違っている、と突っぱねるようになるのだが・・・・


最後の結佳の感情の爆発が読ませる、その前の信子ののたうちまわり方も鬼気迫るものがある。
読んでいるうちに、爆発しろ爆発しろ!と言いたくなってくるのだ。
(井上には殺意すら覚えた)

伊吹が実にいい味を出していて、子供だと思っていたら、案外色々なことを見ていた実は大人になっていた、という成長振りも好ましい。
ここにも書いてあるように、犯罪、でもある、ある種のことは。
それでもこの小説のパワーになっていることは間違いないのだ