2014.10.05 葬儀を終えて
葬儀を終えて (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)葬儀を終えて (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
(2003/11/11)
アガサ・クリスティー

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評価 5(飛び抜け)

ちょっと必要があって何十年かぶりに読み返してみた。
何十年ぶりっておおげさだろう・・・と思い返したがやはり何十年ぶり・・・時は過ぎていく・・・

葬儀を終えて、は、ポアロがあまり動き回らない。
後半の作品なので、ばたばたと色々なところに出向かないし、推理をしている間も遠くにいる傍観者という感じが漂う。
けれど、ミステリの面白さ、というのを全て濃縮しているような作品だと思う。

・犯人の意外さ
・動機のまっとうなこと
・殺害方法
全てが満たされている。

そして、「ある一つのこと」がわかると同時に、するするとこんがらがった糸がほどけていくその快感というのが確かに存在する。
ラストの怖さと驚きが忘れられない作品だ。
がらっと全てが変わるという快感がある。
そして小さなこと、のように思えたことが実は重要な証拠となっている。

大富豪の当主リチャードが死んで、その兄弟、その妻、そのまた子供達(大富豪にとっては甥姪になる)がいて、全員と行っていいほどにお金が欲しいと望んでいる。
遺産相続で大喜びする人達ばかりなのだ。
その葬儀のあとで、一人の末の妹(頭が少しおかしいと言われている)コーラが
「あら、リチャードは殺されたんじゃなかったの?」
と無邪気に尋ねるところから、話は始まる。
この一言によって、リチャードの死因に目が行き、全員が疑心暗鬼になる。
そして次に起こったコーラの死・・・何かを知っていたのだろうか、コーラは。


この中で誰が犯人になってもおかしくない。
読み手側は(誰だ?この人か?)と何度も読んでいて思い返す。
怪しくなさそうなヘレンすら何かを隠している(当主の義妹)と思うと、怪しく思えてくる。
薬屋の夫も怪しいし、劇団員の夫婦も怪しい。
病気ではないのに病気病気と騒いで妻をこき使っている当主の弟も怪しい。
こうして混沌としてきて、(一体誰なんだろう!!!)と頭の中で組み立ていて、ラストの謎解きで鮮やかに解き明かされた時驚愕が訪れるのだった。

以下ネタバレ
・最初のコーラは、本当のコーラではなく
コーラの家の家政婦であった。
彼女は、コーラのところにある重要な絵を取るために、当主が死んだときに一芝居打ったのだった。

本当の殺しの狙いは、コーラ。
コーラが「あら、リチャードは殺されたんじゃなかったの?」
といえば、嫌でもリチャードに目が行く。
そしてそのあとにコーラが死ねば(これは家政婦が殺した)、「リチャードのためにコーラが殺された」と思われる、ここがん狙いだ。
単独でコーラが殺されれば、コーラのみに焦点が当たり、同居している家政婦に目が行く。

動機は、コーラが集めていた絵が欲しかったから。
重要な絵だったが、コーラには価値がわからなかった(と家政婦は思っている)

つまりは、最初のコーラが本当のコーラではなかった(皆何十年ぶりなので顔が既にわからなくなっている)という前提が崩れているミステリなのだ。

・ヘレンの秘密は、
かつて自分の子供を生んだことがある、その子のために遺産を使いたいということであった。

・葬儀を終えたあとの家には、コーラの家政婦はきていないはずなのに
「その時にしか」なかった置物をあとから家政婦が指摘したことをポアロは見逃さなかった。
つまりは葬儀を終えたあとに家政婦はきていた。
では誰なのか。