2014.10.16 闇に香る嘘
闇に香る嘘闇に香る嘘
(2014/08/06)
下村 敦史

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評価 4.7

偶然だけれど、湊かなえの「豆の上で眠る」と全くアプローチは違うものの、設定は似ている。
両方とも、自分の兄(姉)が本物かどうか疑っている、というものだ。
この話では、中国残留孤児であった兄が日本に帰ってきて、その兄が本物かどうかというのを何十年もたって疑っている、という話だ。
中国残留孤児の話だから、当然そこには凄惨な引き揚げの話もあるし、当時の政局の状況、日本の残留孤児への対応の話もあるし、そのあたりきめ細かく描きこまれている。

更には、透析を続ける孫のために腎臓提供を兄に求めるが拒絶されることがその疑いにきっかけになるのだが、不可思議な点字の俳句も続々と届いてくる。
何かの暗号文のようだ。

加えて、主人公の弟は目が見えない。
途中失明なので、要領が悪いし、目が見えないので兄かどうかというのをさくっと突き止められなかったりする。
不安に思っていても、目が見えないので相手がそこにいるかどうかすら確かめ辛い。
相手の表情が見えないので嘘をついているかどうかもわからない。
雪の中で救ってくれた人が誰だったのか。
車道に突き飛ばした人は誰だったのか。
そして更に、目が見えない上に突然意識が混濁して(これはあとで原因はわかるのだが)時間が飛んだりする。

残留孤児の支援をしている人は本当の人なのか。
途中で公安と名乗る人が来るがこれが本当の人なのか。
読んでいて、盲目ゆえに非常にもどかしい場面が多々あった。
だから、読み手は、盲目の弟のもどかしさと心を重ね合わせながら読み進んでいくのだ。

兄が本物かどうか。
その真相は驚いた。
驚いたのだが、色々なものがてんこ盛りすぎて、そこに行き着くまでにちょっと疲れた、というのが本音だ。

以下ネタバレ
・兄が本物かどうか、
というのを探っていくうちに
実は自分が「中国人から日本人の母が引き取った中国の子供だった、実の子は川に流されて(でもその後助かったらしいが)、他人の中国人の子供を日本までつれてきて弟として育てた」
と言う事実にぶち当たる。
これを兄も母も生涯秘密にしていたのだ。

・探っている弟が双子だ、ということがわかる。
ここが双子というのが安直な使い方のような気がした。
双子を使うと、砒素を埋めたのも、ごみだしをしたのも彼がやったと説明できるのだが、
いきなり双子か・・・
でもそのおかげで、孫は助かったのだが。

・ラストのあたりで、誘拐というのがこれまた突然起こる。
このあたり動きが激しくなるのだが・・・・
これまた突然という思いが強かったのだった。

・会っている人が本物じゃない、というパターンが一つならずあった。
これ、一つだけでいいのではないか。
複数やると安直な感じが漂う。