2014.10.20 別荘
別荘 (ロス・クラシコス)別荘 (ロス・クラシコス)
(2014/08/05)
ホセ ドノソ

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評価 5(飛び抜け)

傑作。
なんて面白い話なのだろう。
なんて錯綜した話なのだろう。
そして、なんて背徳的な話なのだろう。
否、背徳的な部分だけではなく、もう物語の面白さのエッセンスがぎゅっとこれでもかと詰まっている小説なのだ。

まずこの本の最初の所の登場人物表を見ただけで倒れそうになる。
巨大な富を誇るベントゥーラ一族の一覧表を見ると、親だけでも7組(一人旦那さんが死んでいて、一人旦那さんがある理由で別の場所にいるのだが、ともかく7組)で、子供達つまり従兄弟従姉妹が入り乱れて30人以上という人数だ。
それにプラスして、執事、下僕、料理長、現地の人と総勢一体何人出てくるのだろう。
それでも全く混沌とせず(内容的には混沌としているのだが、人に至っては混沌としていない)話が滑るように進んでいく。
訳も非常に読みやすい。
途中で作者の言葉が出てきたり、作者の溜息が聞こえそうな一言があったり(たまに一言ではなくかなり脱線する)その部分すら愛おしい。
下手にこれをやると、著しく小説の感興を削ぐものになるのだが、ここでは全くそういうことはない。

話の一番元と言えば以下の通りだ。
金で財を成しているベントゥーラ一族がいる。
彼らは、きちんと金を取る作業が行われているかを見張るためと、自分たちのリラックスのため、ある一定期間「別荘」に子供達ごと移動して優雅な生活を送る、ということをしている。
子供達は総勢33人だ。
子供達は一番上が17歳で、16歳組がこれに続き数人、以下最後の年齢は5歳まで散らばった年齢だ。

ある日、大人たちはたった一日だけ別荘を離れてピクニックをしよう、と言う気持ちになった(ここには色々とはかりごともあるのだが、ともかく全員がそういう気持ちになった)
そして子供達だけで、絶対にこの別荘を出ないと約束させ(外には人食い人種がいると言われている)、気軽な気持ちで外に多くの従僕を連れて馬車で旅立っていくのだ。

そして子供達だけが別荘に残された・・・・・


第一部と第二部に分かれていて、一部は子供達の様子と過去の大人たちのいきさつが生き生きと描かれている。
第二部になると最初が、ピクニックに行った大人たちの様子から始まる、そして悪夢のような子供達の別荘での出来事が綴られていく。
主に大人たちが出て行ってしまった後の彼らのやっていたことというのが、
・屋敷の周りを囲っていて絶対の安全と思われていた槍はずしに興ずるもの
・侯爵夫人は五時に出発した、に興ずるもの
とが主なものになっている。
槍は必死にはずしているのだが、子供達が33本を必死に抜いたあと気づいてみれば、他の槍は簡単に抜けることがわかる。
そしてここにいる子供達も33人・・・

いとこ同士といっても、男女があるのでそこには当然美人に対する鞘当ても起こる。
特に美人と言われていた16歳のメラニアは人気がある。
一方で大人達が出て行って一番最初に反逆をしたのが、ウェンセスラオだ。
彼は9歳男子だが、いつも母親によって女性の格好をさせられていた。
出て行ってすぐに、彼は自分自身で髪を切り男の子の格好をし、そして狂人として閉じ込められている父親のアドリアノに会いに行くのだ。
ウェンセスラオはこの物語の最後まで、話の中に登場し重要な役割を担っている。
一方で可愛い可愛いと言われこのまま食べちゃいたいと言われてている、子供達の中の一番下の子供アマデオはラスト思いもよらない結末になる→本当に食べられてしまう、飢餓状態のいとこたちに。そして彼は自分を食べてくれと死ぬ間際に自分の体をいとこに与えようと遺言する。

時制が、このピクニックの日が「一日ではない」という歪みが生じているのが、後半いとこの二人(カシルダとファビオ)が子供を作ってしまって生んで(しかも双子だった)大人のピクニックの場に割り込んできてしまっているところからわかる。
そしてそれを人形として井戸にあっけなく捨てる大人。

後半、従僕の反乱や悪夢のような追跡劇、金の出所に疑問を抱いた子供の逆襲、段々汚くなっていく子供達、意外な人物が台頭してくる不思議(正嫡の子供ではないマルビナ、しかも荒野にカシルダとファビオの逃亡を手助けし挙句の果てに彼らを荒野に置き去りにした張本人)もある。
地下世界の広がり、時間空間の混沌さ、
召使い達と人食い原住民達の戦争も見逃せない。

繁茂しまくる奇怪な植物グラミネアに息苦しくさせられていたら、ラストのこのフェイドアウトの凄まじさと言ったら!