2014.10.21 図書室の魔法
図書室の魔法 上 (創元SF文庫)図書室の魔法 上 (創元SF文庫)
(2014/04/28)
ジョー・ウォルトン

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図書室の魔法 下 (創元SF文庫)図書室の魔法 下 (創元SF文庫)
(2014/04/28)
ジョー・ウォルトン

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評価 5

いとおしい!
モリという少女の鮮やかさが心に残る。
そして本好きだったら、モリの次から次への読書が突き刺さってくる。

ただただ抱きしめたいモリ。
15歳で事故にあい、片足が不自由になってしかも肉親の縁に恵まれず、施設に入ったモリ。
ようやく実の父(叔母達も)が見つかりそこに行くが、直後に親族の意向で学校の寄宿舎に入ることになったモリ。
差別され、そしてそこでも友達になじめないモリ。
彼女が唯一の救いを求めたのが、SFの本だった・・・・

・・・・
モリという一人の繊細な少女が、尖りすぎるほど神経を尖らせて周囲にガードを張っている。
途中まで(ここまでナーバスなのは、なぜだろう?)と言う気持ちになっている。
そして冒頭出てきた双子の一人はどうしたのだろうという疑念にも駆られる。
そしてお母さんとの経緯もわからないまま物語は徐々に進行していく。

ここに出てくる本のなんときらびやかなことよ。
そして一度もあったことのない実父との心のつながりも実はSFという本を通じてだった。
更に友人ができなかったモリにとって、外の世界の図書館で偶然知り合った司書を通じての読書会は他の学校の生徒と知り合う機会でもあった。

ここには本というものを通じて一人の少女が明るい方向に行く、という成長も描かれている。
大好きな本を無我夢中で読んでいるモリ。
読書は言うまでもなく一人の作業であるにもかかわらず、学校の図書室の先生、町の図書館の司書、読書会のメンバー、そして常に適切な本を用意してくれる父、とモリの周りには次第に本を通じての輪が出来上がってくる。
モリが最初に読書会に行ったときに
「しゃべりすぎたかしら?」
と思う姿も可愛らしい。
フェアリーを常に探しているモリの姿もまたよく見かける。
全ての事象を、ファンタジーの世界の魔女などに当てはめて考えるモリの姿もまたここにある。
母親からの執拗な悪意ですらその中に入ってくる。
そしてラスト対決が・・・

このラストのところ、人によって受け止め方が違うと思う。
私は、解説の最後のところに書いてあることでずうっと受け止めてきた。
モリ、あなたを忘れない。

(巻末にここに出てきた本の一覧がある丁寧な作りにも感謝!)

以下ネタバレ

以下私が思ったこと。

ファンタジー世界にもぐりこむモリは、自分を虐待する母から逃れようとしている。
唯一ファンタジー世界が自分を守る術のある世界。
階段から落とされたモリ。
それを見つめるもう一人の双子の姉妹もモリの脳内にあった一人だ。
(ただそうすると写真の説明がつかないが、自分の顔が焼ききられていたというのは別の人だったら説明がつく。
または双子の姉妹は母によって虐待死させられた)

何しろ全編モリの語りなのだ。
だから、本当にあったこと、と、それにプラスされた物語のこと、とが入り混じっている。