2014.10.25 虚ろな十字架
虚ろな十字架虚ろな十字架
(2014/05/23)
東野 圭吾

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評価 4.4

相変らず読みやすい。
さくさくさくさく読める。
もうこれはさすがだとしか言いようがない。
誰が誰やら、どういう事件やら、さくっとわかるのだから。

ペット葬儀屋を営む中原道正のところに刑事が訪ねてきた。
中原は実は以前に自分の愛娘を自宅で殺されたと言う過去を持つ。
そしてその犯人は捕まって死刑になっているのだ。
今度は、離婚した中原の妻が殺された。
一体誰が・・・・
と、すぐに犯人は捕まるのだ。
しかしその陰に意外な事実が・・・・・


自分の肉親を殺されたら、誰しも犯人に殺意を覚えるだろう。
そのあたりの感情を死刑制度と絡め推理小説に仕上げてきている。
死刑制度の是非というのも考えさせられる。
一方で、推理小説として、「なぜ妻殺しの犯人が自首したか」というところの説明になってくるともやっと感がある。
なぜなら、大元のことが(冒頭の描写は何だろうとずうっと思っていた)なんとなく見えてきてしまうからだ。
そしてそれは確かに重い罪なのだが、男がそのあとしたこと、というのが納得できるようなできないような気持ちが横たわっていたからだと思う、私の中で。
この中で花恵ってこれで良かったのだろうか。
これしか生きる方法はなかったから仕方ないのだろうが。
だからこのあたりで、死刑制度云々の話がちょっと弱くなるような気がした。
死刑制度?と思っていると、横道に入ってくるからだ。
大元のところが罪という人間ドラマと、最初の子供殺しの人の死刑・次の妻殺しの人への求刑の是非が、噛み合っていない気がしたのだ。
後半、死刑制度の話が、薄くなっていったなあと思ったのだ、人間ドラマの方が前面に来たからなのかなあと思ったりした。

あと偶然とはいえ、同じ人が、殺人事件二人の親族になるってどのくらいの確率だろう。
中原は離婚しているとはいえ、娘を殺され、元妻を殺される。
なんだかあまりにできすぎているなあと思った。
更には偶然とはいえ、樹海で「おなかの大きい女性が自殺する」のに「それに関係するある事情を持った男性」が行き会う確率ってどのくらいだろう。
このあたりもとてももやっとしたのだった。

これ、ドラマ化したら面白そうだ。
(と思ったら、映画化されているらしい)

以下ネタバレ
・かつて高校生なのに子供を作ってしまった
沙織と史也。
二人は二人だけの秘密として、樹海に子供を埋める。
そして長じて、沙織は理由なき自殺未遂を繰り返し、結婚も失敗し、風俗嬢になり、万引きを繰り返す転落人生を歩んでいる。
史也は小児科医になり、樹海で自殺しようとしたおなかの大きい女性花恵を救って結婚する。贖罪の気持ちをこめて。
更に花恵のどうしようもない父をアパートに住まわせ金銭面の世話までしている。

(花恵の気持ちはどうなのだろう。
男に貢がされ、妊娠してどうしようもなかったのでそれでいいのか、相手の贖罪のための結婚で始まって。
また史也、こんないい人なんだろうか。
良すぎないか、いくら自分が罪を背負っているとはいえ。)
花恵の父が、ルポライターの小夜子(中原の元妻)が過去の史也たちのことをかぎつけ自首するようにしようとしているのに気づき、せっかくの娘の幸福を台無しにするものだ、として、小夜子を殺害するのだった。