2014.11.06 謎003
恩田陸選 スペシャル・ブレンド・ミステリー 謎003 (講談社文庫)恩田陸選 スペシャル・ブレンド・ミステリー 謎003 (講談社文庫)
(2008/09/12)
佐野 洋、仁木 悦子 他

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評価 4.9

選者が恩田陸というだけで読んでみたくなる、物語の紡ぎ手であると同時に強力な読み手でもあるから。

1972,1982、1992年に出た話が底本になっているので些か古い、と思いきや、これが楽しめるのだ。
特に好きだったのが、冒頭の佐野洋だ。
この面白さの原点は、「死んだはずの娘の恋人が海外から戻ってきた。
(しかし娘は既にあきらめて、別の人と結婚して子供が生まれる寸前である。)
娘の恋人の死亡を認めた実の母親は、一体どういう意図があったのだろうか。」
というなんだかわからない状況下に自分が入り込んでいた、という戸惑いの面白さだろう。
しかも、この話、実に意外な展開を見せる。
皮肉な展開といってもいいだろう。
そうまでして、死んだことにした意図とは・・・

また戸川昌子の眠れる森の醜女、はなんて嫌な話なのだろう。
自分の妻とは違うとわかっているのに、献身的に寝たきり状態の女性を必死で看護する男・・・
しかしそのうちに黒い欲望が男の中に巻き起こってくる。
この物語、映画のトーク・トゥー・ハーの何年も前に書かれた作品で、全くアプローチは違うしタッチも違うのだが、禁忌ということで、ふと映画を思い出したりもした。
そしてラストのなんともいえない苦い結末・・・

天藤真の純情な蠍も、いかにもこの作者らしいサービス精神に満ち溢れている。
にかっと笑いたくなる結末が心憎い。

収録作品
死者の電話(佐野洋)/一匹や二匹(仁木悦子)/眠れる森の醜女(戸川昌子)/純情な蠍(天藤真)/奇縁(高橋克彦)/アメリカ・アイス(馬場信浩)/帰り花(長井彬)/マッチ箱の人生(阿刀田高)

・・・・
ラストの恩田陸の解説がまた素晴らしい。
これを読んでもし面白いと思ったら、次はこういう作品をと示唆している。
それが実にポイントを抑えているのだ。