あなたの本当の人生はあなたの本当の人生は
(2014/10/07)
大島 真寿美

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評価 4.5

ほっこりする小説であると同時に、ふと自分に「あなたのほんとうの人生は」と問いかけてみたくなるような小説だ。
その言葉は、下手すると説教臭くなるのだが、ここではとても自然に話の中に組み込まれている。
全体にファンタジーの要素がなぜか強いような気がした小説だった(ファンタジーではないのだが)

最初の方で、ばらっとした印象があった、旬は過ぎた編集者、國崎(作家志望の女の子)、宇城(作家の秘書の女性)、そして森和木ホリー(大作家の先生)がばらばらっと出てくる。
でもそれが糸をよるように段々まとまってくるところから話が展開していって面白くなってきた。

ホリーは、かつて小説の大ヒットを持っているが今は書けなくなり、脳梗塞も起こし、豪奢な住まいでほぼ隠遁生活を送っている。
そのお世話をしているのが、かつて市役所の公務員であり、ホリーに声をかけられた(あなたのほんとうの人生はと声をかけられた)宇城だ。
そこに、ホリーの夫とギャンブルをしてホリーのお金を使い込んだことのある編集者が、新たな作家として國崎を送り込む。
國崎は、ホリーの小説の登場人物にもなっている猫のチャーチルと呼ばれるのだ・・・・


それぞれの人間の視点で描かれているので(それが章の冒頭の可愛いイラストでわかる)、思惑が次々にわかっていく。
國崎はともかくも、一熱烈ファンとしてホリーに小説の続きを書いて欲しいのだ。
一方、自堕落な男の編集者と思われた鏡味は、ホリーの元夫と交流を続けていた。
宇城の存在もまた面白い、いわばホリーにいきなり地方でスカウトされた女性なのだが、ずうっとその時の言葉、「あなたのほんとうの人生は」というのを考え続けている。
もしあのときにそのまま故郷にいたら。
もしあのときにそのまま不倫の関係を続けていたら。
もし、もし、もし・・・・

この「もし」は登場人物全ての人にある。
もし編集者鏡味がもうホリーとかかわりを持たなかったら。
國崎が一旦帰宅してしまったときに、もしどうしてもホリーの元に戻らなかったなら。
もし彼女がホリーのところでコロッケを揚げなかったら。
一体どこにほんとうの人生があり、ほんとうの人生って何だろう、と考えさせられる。
そして
和が繫がるように、コロッケで、人が繫がっていく。
貧しい時代にコロッケで繫がっていた、元夫とホリーが繫がって
その夫の息子と、國崎が繫がっていく。
そしてチャーチルはいなくなるのだった。

ホリーの千里眼もまた見所だ。
予知のように色々なものを見てしまうホリー。
そして、白い部屋で物語の続きを書こうとするホリー。

・・・・
この小説、後半のそれぞれのその後、的なところが私はいらないかなあ・・・とちょっと思ったのだった。
ここはもう読者の想像に任せると言うところで、ばっと切ってもいいかなあと。
そういう小説が私の好きな小説であるからかもしれないが。