2014.11.25 窓辺の老人
窓辺の老人 (キャンピオン氏の事件簿1) (創元推理文庫)窓辺の老人 (キャンピオン氏の事件簿1) (創元推理文庫)
(2014/10/14)
マージェリー・アリンガム

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評価 5

クリスティー、セイヤーズ、ナイオ・マーシュと並んで四大女流ミステリ作家の一人がこのマージェリー・アリンガムらしい。
初めて読んだけれど、短編でそれぞれの話がとても読みやすく趣向が凝らされていた。
探偵役のアルバート・キャンピオンが際立った個性がないのも目新しい気がする。
普通の男で、特に神経質でもなく、気取ってもいなく、警察と丁々発止やりあうわけでもなく、汚いわけでもなく、実に実に普通の男、なのだ。
今の時代だったら、草食系と言えるかもしれない。
加えて、彼自身のことはそれほどこの短編集ではわからない。
途中の一つの話で、ある田舎に住んでいてそこの近くの人が坊ちゃんと言って都会で偶然再会した話があるのだが、坊ちゃん、ではあるのだろう。
窓辺の老人の話の中でも、有名なクラブに所属しているのでそれなりの地位なのだろう。
でもほぼ家族のことは出てこないし、今現在結婚していない男っぽい、でも人様の恋愛沙汰に妙に親切である、可愛い女の子が結婚間近なので(知り合いとはいえ)結婚の贈り物をあげたりしている。
ここもとても気がいい、しかも自分はライバルにはならない草食の男なのだ。

警察に常に一緒に事件を解決する男もいたりする。
これがシャーロックホームズでいえばワトスン君っぽいのだが、それも、シャーロックのように最後まで新装を秘密にしておくのようなことはない、二人で解決しましょうのスタンスなのだ。
ここも実に気がいい。

この中で、表題作はとても面白かった。
老人が20年間毎日7時間半も社交クラブの窓辺にすわり続けているという伝説を持っている。
この話に絡んで、二人の男が一人の女性をめぐってちょっとしたバトルになっている、というのが綴られている。
老人がばったり死ぬのだが・・・
後半、腰を抜かすほど驚くクラブの人達が微笑ましい。
老人は替え玉がいて、本物は生きていたのだった。
すりかわりの話。
そしてこの老人の死亡を確認したのが、医者の男で女性を婚約者から奪った男。
彼は窮地に立たされるのだが・・・・



冒頭のボーダーライン事件も舌を巻いた。
どう見ても図からすると、この殺人事件が誰が殺したのかわからないというところに落ち着く。
しかも殺す犯人はわかっている、のに。
そしてここにも女性が絡んでいて、彼女が証言したと言うことが皮肉な結末になっている。
彼女が証言したのは真実であったのだが、これが犯人の隠れ蓑になる。
一人の善意の警察官ががあまりに暑い日だったので、最初倒れたのが暑さのせいだと思って、動かしたのだった。
暑さが強調されていて、そこが大きな要因になっているところ、あくまでもこの警察官は善意であった、というところが面白い


懐かしの我が家はこの言葉の意味を使っての詐欺事件、というのが非常に面白い。
人の心理をたくみに突いた詐欺。
形を変えて、今でもこういう詐欺がありそうだ。
しかも
最後の最後で
懐かしの我が家というのが本当に懐かしの我が家だった、隣りのコテージに住んでいて好意を寄せていた男の子が帰ってきたのだった。
名前を最初から言っているところがミソ。


怪盗“疑問符”は証言者が彼を上から見た、というところが非常に重要なポイントとなってくる。
体の形を曲げた怪盗・・・

未亡人は、未亡人と呼ばれている犯罪者が、不思議な新聞記事を出す。
その直後、複数のワイン商へある科学的実験への参加を呼びかけるのだ。
ここにキャンピオンが行くのだが・・・
この話、残念ながらV字の頭の剃り跡だと、未亡人というのがいまひとつ良くわからなかった。

行動の意味もとても好きな作品だった。
いきなりミュージックホールに通いつめているエジプト学者の男がいて、彼の娘が心配して依頼してきたのだ。
なぜ?女に狂った?と誰しも思う中、この意外なそして結構大きな真相は面白い。
国際的陰謀にまで発展している話で、学者はダンスを通じてのその暗号を解き明かそうとしていた。
そして何者かに殴られてしまうのだが・・・・
彼を、キャンピオンが知っているちょっと犯罪に関係する男が(天才すりである)、彼の財布一切合財をするというところがとてもとても面白い。


犬の日、は最初よくわからなかった。
二度目にわかったのだった。
ああ・・・こういうことか、と。
掌編ながら面白い。
ホテルの中で知らない人同士が知り合うには何かきっかけが必要だ。
それがこの人達の役目であり、犬の名前あてで、皆を盛り上げる。
それに気づかなかったキャンピオンは無粋にも冒頭のところで会った犬の名前をそのまま当ててしまうのだった。


解説がとても丁寧でここもまた素晴らしい。
こういう解説だと解説の意味があると思う。


ボーダーライン事件/窓辺の老人/懐かしの我が家/怪盗“疑問符”/未亡人/行動の意味/犬の日/我が友、キャンピオン氏