2014.12.25 災厄の町
災厄の町 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-12)災厄の町 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-12)
(1977/01/30)
エラリイ・クイーン

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評価 5

新訳が出たというのでまずこちらを再読してみた。
ライツヴィル物なので、小さな架空の町という設定になっている。
ここにクイーンが行って事件に巻き込まれるのだが・・・・

結婚式の前日にふいっと姿を消した花婿ジム。
ところが3年後に戻ってきて、置き去りにした富豪の娘ノーラと結婚するのだった。
ところが偶然ノーラが見つけた出されなかった三通の手紙には、妻の殺人を予告するような文章があった。
それはジムの妹にあてた手紙であった。
ノーラも戦慄したらしいが、あとでそれを見たクイーンとノーラの妹パットも心痛めている。
そして、その三通の手紙どおりに砒素が盛られていった・・・・


途中で裁判の様子にもなるのだが、ここで特にライツヴィルという小さな町の閉塞感が出ていてそのあたりが物語に深みを持たせている。
噂話、隣の人が何をしているかの興味、全部一族のことを町が知っている、閉塞感からくる鬱積、異分子の排除の気持ち、そして発展して行って暴動、いじめ・・・・・・
こういう町の特殊性というのはよく推理小説に使われるけれど、近年読んだものの中では 遮断地区 (ミネット・ウォルターズ)が思い出される。

改めて読んでみると、パットという三女の元気のよさ、自由闊達さが殺人事件が起こりしかも妻が夫の殺人に怯えている、というこの話を明るく照らしてくれている。
クイーンとのちょっとした交流(恋のやり取りっぽく見える)もまた楽しめる。
長女のローラは結婚して出て行って離婚して戻らず、なのだが、途中でおおいに貢献してくれて、静かに長女らしく実家が困ったときには守ってくれる(ただ影は薄い)

そして次女のノーラ。
口さがないライツヴィルの人達の格好の餌食となったノーラ。
その原因は実家の隣りに彼女達の家まで親が建ててくれたのに直前になって花婿失踪という椿事で、どん底の気持ちにいた、からであった、加えて体も元々そんなに強い方ではないのだ。

美しくそしてそれぞれの個性を持った旧家の三姉妹、そこにさまざまな街の人たちの目が加わり、不思議な毒殺事件があり、物語は進行していく。

そもそもなぜ花婿は去っていったのか。
更に、なぜ戻ってきて結婚したのか。
このあたりにもおおいに謎が残る。
そして花婿の妹が乗り込んできて、新婚世帯に同居して、ますます様相が混沌としてくるのだ。

最後まで読むと、去っていった原因はさほどのものではない。
でもなぜ3年後戻ってきて結婚したのか、とこのあたりは非常に巧く描いている。
誰も毒を入れる時がないのに(何しろクイーンが見張っていたのだ)パーティーのカクテルに毒が入っていて、それがちょっとした出来事からある人間に渡ってしまったという悲劇。
一体毒は誰が入れたのか。
裁判にかけられ、有罪となっているジムが真犯人なのか。

毒の入手からそのキッチン場面まで何度も再生される。
ここからクイーンが過去にまでさかのぼり最後の結論を出すところが圧巻だった。

以下ネタバレ
重婚。
というのがベースになっていて
妹と言って乗り込んできたローズマリーは偽者で、実はジムが行方をくらましていた間に結婚してしまった妻であった。
三通の手紙は、この妻に対して殺意を抱いていた、というもの。
だから現在の妻ノーラに対してではなかった。
(そもそもこれが封をされた箱に入っていたというところから、「まだ結婚にイエスと言ってもらってない段階なのに」ノーラを殺すとは考えられない。更にノーラとは書いていない、「妻」と書いているのだ。
そして偽ローズマリーは脅迫して、ジムからお金をむしりとっていた。

ノーラはこれに気づく、立ち聞きで。
そして、カクテルに毒を入れてローズマリーを殺したのはノーラであった。
ジムはそれに気づいている。
だからこそ、ラスト近くで脱走して、自ら車ごとダイブしたのだ。

本当の妹というのも一方でいて
それが常にジムを庇っていて自分の職さえ失った新聞記者のロバータ。

・・・
この話、あちらには戸籍、がないというのを毎回思う。
日本だと戸籍があるので、重婚はまずない(戸籍をみなければ別だけれど、普通結婚のときには見るだろう)