2015.01.06 第三の男
第三の男 (ハヤカワepi文庫)第三の男 (ハヤカワepi文庫)
(2001/05)
グレアム グリーン

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評価 4.9

映画とひどく違うのは、この最初にグレアム・グリーン本人が書いてあるが(ロロという名前とか、ラストでの女性との関係性とか、イギリス人をアメリカ人にしたとか)、これとは全く別に、
誰がこの物語を書いたかというのが、警察の人、と言うことになっているというところだと思った。
だから映画では警察の人というのが、主人公のハリーを訪ねてきた友人の作家の敵なのか見方なのか判然としないまま進んでいく。
けれど、この小説の作り方だといち早く、警察の人が味方なんですよ、というところが見えてしまう。
だからサスペンス度というところでは、映画の勝ち、なのだ。

勝ち負けというより、映画を当て込んで作った小説なので、どうしたって映画に分があるだろう。
しかもあの有名なオーソン・ウェルズのスイス時計の言葉はどこにも出てこない、これが彼のアドリブだったなんて。

それでも話は謎に満ちていて、なぜハリーが殺されるに至ったかというのが、自動車事故の目撃証言の食い違いというところからも謎が謎を呼んでいく。
ハリーの元恋人に段々心引かれていくロロの心持ちも余すところなく描かれている。
この物語の最大の山場は、どういう犯罪にハリーが関わっていたかと言うところだと思う。
ここがわからないうちは、なぜというのが充満しているけれど、そこがわかると全てがするすると解けていく。

ラスト、映画はあれで完璧だと思うけれど、もしかしたら小説のこのラストも「小説としては」イケテルのかもしれない。