ギリシャ棺の秘密 (角川文庫)ギリシャ棺の秘密 (角川文庫)
(2013/06/21)
エラリー・クイーン

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評価 4.8

若いよ!エラリー。
青いよ!エラリー。
なんだかそう言ってあげたいようなエラリーがここにいた。
全体にとても初々しい。
ただ・・・どうなんだろう。
ものすごい好みの作品と言うかと言えば、私にとってはそうでもないのが本音だ。
正解ではない解明が幾度か展開される、という前の解明を消していく新しい論理の展開に次ぐ展開という形式が、あまり私にはフィットしなかったのだ。
きっと論理好きな人はここのクイーン自らのひっくり返しに痺れるのだろう。
私はそこよりも、全体の雰囲気とか細かな話とかそちらの方にぐっと惹かれたのだった。

最初がとても魅力的なところから始まる。
なんといっても、盲目の大富豪が死んで貸金庫から彼の遺言がなくなった。
さてそもそもそれはどこに行ったのか?
これをエラリーが推理していく場面は素晴らしい、大富豪の家から出て行った人、入ってきた人を総浚いし検証し、残った結論は、こうだというところが素晴らしい。
そして墓の堀起こしが始まってその場面もまたショッキングだ。
なぜなら→死体の上にもう一つの死体が重なっているからだ。

途中ある失敗もありながら、ネクタイの話に言及していくところもぎょっとする。
盲目の大富豪がなぜネクタイの色がわかったのか。
身の回りのお世話をするデミーはどういう役割をここで果たしているのか。
このあたりの開き方が非常に目を惹いた→デミーが色盲であるというトリックは今となると赤と緑のネクタイというので想像がつかないこともないのだが、当時斬新だっただろう。

あとはタイプライターのあることが、推理を進めるのだが、ここはかなり日本人だとわかるがぴんとこない、と言う部分でもある。
ダ・ヴィンチの完成しなかった有名な壁画「アンギアリの戦い」の部分油絵の存在というのもかなりの重要部分なのでこれを使っての犯人おびき出しは見ていて胸がすくものだった。

一方で、この犯人が意外かといえば意外だけれど、強烈に驚くということがなかったのだ。
それより一歩前の指摘された犯人が(やっぱりね・・・でもこれじゃあ単純すぎ?)と思っていて、それが見事に引っ掛けでひっくり返されるところに仰天したのだった。

しかし今読むと、一回大失敗した人の話を皆が真剣にまた聞いてくれる、というところで、エラリーは恵まれているなあと単純に思ったりもした(普通これだけはずしたら、次からは誰も聞かなくなると思うので)