2015.01.10 絶叫
絶叫絶叫
(2014/10/16)
葉真中 顕

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評価 4.7

この日本、一度落ちたらもうそこからは這い上がれないんだなあ・・・と改めて思ったのだった。

テレビとかでよく報道されている貧困層。
そして生活保護問題。
児童虐待。
ホームレスの囲い込みとその利用。
シングルマザーの子供を育てていく方法。
デリヘル嬢の現実。
家庭内パートナーからのDV。
保険業界のからくり。
戸籍のからくり。
替え玉殺人と保険金殺人
・・・・・・・

読んでいて本当に辛くなる。
どこでこの女性鈴木陽子は負の連鎖をストップできたのだろう、いわゆる普通の道を歩めたのだろう。
最初の結婚の時だろうか。
もしあの時に子供が出来ていたら違った人生だったのだろうか。
それとももっと前に、思い切って高校卒業時に東京に出てきた方がよかったのだろうか、それとも同じになったのか。
ここはもう誰にもわからない、彼女自身にもおそらく。

この話、読んでいると、生活保護問題も根が深いことがわかる。
なぜなら、陽子が苦労して稼いでいるときに母親が生活保護状態になっていて、それを指摘され結局陽子が母親を見ることになる。そして更なる苦難が待ち受けている。
ここまでの陽子の母親は、見る価値がないんじゃないか、と思うような行動を取ってきた。
子供が稼いでいて親を見るのは当たり前、そこに生活保護を出す必要はない、と思っていたが、それは「普通の親子関係」であることが前提だと言うのを突きつけられた思いだった。

後半、陽子に肩入れしたくなってくる自分がいた。
そして二人称で描かれているようこの人生部分。
なぜ二人称かというのがわかった時に、暗澹とした気持ちになった。
また
時系列が陽子部分と女性刑事が追っている部分とずれがあるだけにそこもまた驚きを誘った。

全体にちょっとだけテーマが広がりすぎているような気もしたし、女性刑事の娘綾乃と陽子が対比させられているのだろうが、女性刑事像があと一歩のような気がした。

以下ネタバレ
・最大のトリックは
二人称で語っている語り手は、陽子が自分と見せかけて殺したデリヘル仲間だった樹里の言葉ということだ。
彼女樹里の本名は橘すみれ。
樹里は陽子によって殺されたのだった。

陽子は自分が孤独死したように見せかけ(それが橘すみれであった)猫で全体をわからなくして、臍の緒も偽装して、自分の存在をなくしたのだった。
そして陽子は橘すみれとして生まれ変わった。

つまり271ページで、自分の家があった場所に出来たマンションの一階に店を開いている女が陽子だ。
だから、女性刑事と陽子は実はここで出会っている、整形後の「橘すみれ」として(名前は言っていないが、ミスバイオレットという店の名前から明らか)

女性刑事視点と陽子の人生を語る視点とが交互に出てくるが(その間にホームレスの言葉とかも入ってくるが)、それは時系列がずれている。

・コスモちゃんは「幸せな結婚をしたはずのデリヘル仲間」によって殴り殺されていた(193ページ)
彼女もまた結婚が巧くいかなかったのだ、一見玉の輿に乗ったようで、陽子の猛烈な怒りを一時的に買っていたが(というのを多分陽子は知らない)