家蝿とカナリア (創元推理文庫)家蝿とカナリア (創元推理文庫)
(2002/09)
ヘレン・マクロイ

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評価 4.5

古きよき時代のミステリ、と言った感じの話だった。
謎解き、の話の部分よりも、私はこのタイトルが何だろう何だろう?と気になってならなかったが・・・
よくよく見たら原題は、Cue for Murderなので、蝿もカナリアもなかった。
ヘレン・マクロイだから心理サスペンスかと思いきや、これは普通の本格ミステリだった。
けれども、その中にも心理の問題が・・・・

ベイジル・ウィリング博士はある日新聞で奇妙な記事を見つける。
それは、ある刃物研磨店に押し入り強盗が入り、何も盗まずにただ「カナリアのかごを開けていった」というものだった。
この犯人は一体何をしたかったのか。
そしてこれに続く劇場を舞台にした殺人はどう始まってどう終わっていったのか。


どの部分も映像が頭に浮かぶ。
劇の話だから、古今東西の劇が色々と引用されているのも読んでいて好ましい。
また劇の最中に人が死んでしまうというところもとても描き方が魅力的だ。

1940年代のニューヨークの情景目の前に広がっていく。同時に劇場の雰囲気もこちらに伝わってくる(何度も表紙も見た)
また人の心の裏側を覗き込むようなそんな視点がとても好感が持てたのだった。
ヘレン・マクロイのミステリ、詳細に描かれているので描写が長い。
そのあたりが好みが大いに分かれるところだと思う。
私は、正直トリックとか伏線とか(伏線はやや感心はしたものの)よりも、この緻密な描写を読んでいる時の方が、トリックがわかった瞬間のあ!と言う気持ちよりも楽しい。

しかし、家蝿もカナリアも、真相がわかってみると・・・ううむ・・・
だからこのあたり古きよき時代の古典、と最初に書いた通りなのだ。

以下ネタバレ
・家蝿が、刺したものの「柄」のほうに止まっていたと言う事実。
血の方に止まっていなかったと言う事実。
ここから、なぜか、が始まる。

糖尿病というのが前面に出てくるが、これがきっと当時はさほど一般的な病気として知られてなかったのだろうと推測する。でなければ、あまりに直接的なトリックだ。
しかもありえる?と思ってしまう、現代の目から見ると。

・カナリア、の方は心理状態の話だ。

閉塞されたところから逃げさせたい。
つまりは、自分がかつて閉塞された場所(収容所もしくは牢屋)にいた人間だ。

というのも、こんなわかりやすい、いやわかりにくい(犯人がこんなわかりやすいことをいくら心理状態が妙でもするだろうか)というのが難点だと思う。
ただ、この心理状態に行き着くまでの話、というのは読み応えがあった。