犯罪心理捜査官セバスチャン 上 (創元推理文庫)犯罪心理捜査官セバスチャン 上 (創元推理文庫)
(2014/06/28)
M・ヨート、H・ローセンフェルト 他

商品詳細を見る

犯罪心理捜査官セバスチャン 下 (創元推理文庫)犯罪心理捜査官セバスチャン 下 (創元推理文庫)
(2014/06/28)
M・ヨート、H・ローセンフェルト 他

商品詳細を見る


評価 4.9

タイトルがセバスチャンになっているので、心理官のセバスチャン中心の話、と思いきや、刑事全員がくっきりとあぶりだされるように描かれていた。
その背景までも。
そして全ての人が小さな秘密から大きな秘密までを胸に抱えている。
これは犯人のみならず、証言者のみならず、刑事側も、なのだ。
そこがとても面白いと思った。
これだけ多くの人が動いているのに全員がくっきりと見えていると言うのも素晴らしい。

心臓を抉り取られた少年の死体が発見される。
国家刑事警察の殺人捜査特別班が救援要請に応じて、出動する。
四人の刑事と、突然飛び込んできたかつてのトッププロファイラーセバスチャン。
けれどもこのセバスチャンは、セックス中毒で自意識過剰で協調性のない男であった・・・・


セバスチャンがなぜ仕事をやめたのかと言うのが徐々にわかってくる。
呆然とするような事実が彼にはあった。
それを胸に秘めているのだが、なぜ彼が刑事と一緒に再びタグを組もうかと思ったかと言うと、そこにはある一つの希望があっただった。
そしてその希望を満たすには、なんとしても警察内部に入り込まないと資料が引き出せない。
その思いで、セバスチャンはずかずかと入り込んでいくのだ。
でも証人とは寝る、被害者の友人の母とは寝る、というようにセックス中毒の彼はやり放題だ。
おまけに一緒に組んでいる同僚には暴言は吐く、セクハラ発言はあるとここもやりたい放題だ。

セバスチャンの強烈な登場によりチームもギクシャクし始める。
そして彼らも小さな秘密を心に抱えているのだ。

殺された少年が最初はおとなしいいじめられっ子でお金持ちの集まる学校に転校して生き生きとし始め、ガールフレンドも出来ている、だったのに、途中で徐々に少年の本当の姿が見えてくる。
このあたりもとても面白い。
誰が犯人かというのも勿論興味があり、捜査チームとともに追っていく気持ちにもなったけれど、捜査していくうちに一筋縄では行かない少年像が焙り出されていく。

そしてラスト。
驚いた、全てが解決した後にこのような苦い真実が!

以下ネタバレ
・セバスチャンはかつての津波で愛する妻と子を失っている。
その夢をたびたび見るほど心に傷を負っている。
(何かでうしなっているというのは前半で出てくるがなかなかこの真実はわからない。
そしてわかった時に、読者も、これならば・・・と納得する傷の深さだ)

・セバスチャンは折り合いの悪い母が亡くなったことでその家からある手紙を発見した。
それは自分の子供がどこかにいるかもしれない、という昔の相手からの手紙だった。
自分の子供がいるかもしれない希望。
しかしデータベースに確実にアクセスできるのは警察だけなので、チームに加わることにしたのだ。
そして母親を特定してラスト問い詰めるが、拒絶される。
ラストその家に来るのは、同僚だったヴァニヤだった。
ヴァニヤこそが娘だったのだ。
(そして小説の巧妙なところは、セバスチャンとヴァニヤの父はこの前に偶然会って会食をしている、ヴァニヤに嫌がられながらも。
ここで実父と育ての父が意図せずして会食していると言う図だ。)


以下覚書

・トーマス・ハラルドソン(警察の警部)
女性のハンセルに出世を阻まれ焦っている。
同時に自宅では、妊娠を希望しているイェニーに常に肉体関係を迫られている。
少年殺害の少年遺体の発見は、ボーイスカウトの子供が発見するがこの時に彼は自宅でイェニーと関係を持っている最中だった。
これが尾を引き、のちのち足が悪い振りをする羽目になる。
彼はちょっとした狂言回しで、犯人を「足が悪いのに」追いかけてそれを近所の人に目撃されて足の悪くないのがばれたり、おまけに最後に撃たれ、いいところなしでお気の毒な人だ。
常に笑いが出るハラルドソンがいる。

・トルケル
殺人捜査特別班のリーダー。
セバスチャンの懇願に負け、彼をチームに引き入れたことからウルスラとの関係が崩れ始める。

・ウルスラ
鑑識官。
トルケルと関係を持っているが、実は夫ミカエルがいると言う複雑な関係だ。
そして自分に黙って問題児セバスチャンをチームに引き入れたトルケルに怒っている。
トルケルにやきもちを焼かせるために現在の夫ミカエルを呼んでみる。

・ヴァニヤ
刑事。
署の誰にも言っていないが、父親が癌で入院して大変なことになっている。
父親を心の底から愛しているヴァニヤはそのことで一喜一憂し、母親と連係プレイをしながら父を助けようとする。
今父は小康状態を保っている。
一方でセバスチャンを嫌っている。

・ビリー
若き刑事で、パソコン関係にとても強い。
何度も何度もビデオを見直し、あることを発見する。