2015.02.18 死と砂時計
死と砂時計 (創元クライム・クラブ)死と砂時計 (創元クライム・クラブ)
(2015/01/10)
鳥飼 否宇

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評価 5

面白い。
ちょっと屈折したミステリだけど、私は夢中になって読んだ、それだけの牽引力がある。
この作家の作品は全部ではないにしろいくつか読んでいるが、その中でもっともぴんときてもっとも面白いものだった。

まずこの設定が今の現実を映し出しているようで興味深い。
あらゆる国から集められた囚人達のでそこには宗教観の違いがある。
当然そこには火種がいつもくすぶっているという状況だ。
おまけに宗教の違いによる謎解きというのも鮮やかに行われる。
世界の紛争、戦争と言うのも描かれている、それは実際のものが。
だからチャウシェスク政権とかも出てくるし、その他の紛争地域の話も出てくる。
このあたりがとてもタイムリーなミステリでもあるのだ。

架空の国の架空の刑務所の話、なので乗れるかどうか最初危惧していた。
が、なんのその。
これがすぐに乗れるのだ。
独特の世界観、があるけれど、きちんとこの世界のルールが説明されているのにも好感が持てた。

世界各国から集められた極悪の死刑囚達。
彼らを収監しているのがジャリーミスタン終末監獄だ。
全員そこの死刑囚は死刑になる運命だが、その運命はこの国の投手によって決められる定めだ。
彼らの体のどこかには逃亡できないように、また違った地域に行かないようにマイクロチップが埋め込まれている。
ここに一人の青年アランが親殺しの罪で捕まってくる。
アランは、非常に頭のいい老人シュルツの弟子になり監獄内の不可解な事件に携わっていくのだった。


いわば、シュルツ老人がホームズなら、アランはワトソンだ。
どういう事件が起こるかと言うと、これがまた監獄ならではの事件なので目新しい。
そしてその真相、もそれぞれ非常に仰天するとともに納得がいくものだった。

ラスト、なんともいえないラストになっている。
後味としてはとても苦い。
苦いが、このラスト嫌いではない。

・・・・・・・・

・魔術を使うといわれている囚人ともう一人の日本人の傭兵はなぜ死んでいたか
(魔術を使う囚人が裸になっていつも魔術を使うと言うところに着目。
不自由な足の大腿骨の中に物を入れていて、刃物もそこに入れていた。)


・死刑の執行の前の夜に、なぜ囚人が独房で惨殺されていたのか。待っていれば死刑が執行されるのに。
(責任感の強いしかも孤独で余命も少ない監察官が、囚人が監獄内で非道な行為をしているのを知って
彼を殺人者に仕立てあげた)


・なぜ闇夜ではなく満月の夜に囚人は脱獄できたのか。
(診療室から拘束のための革ベルトを何個か盗む。それを牛を捕まえるカウボーイのように投げる。
明るい月夜の中で見咎めた見張りが首を出したところに引っ掛ける。
彼は有名な外科医だったので、マイクロチップのために目をくりぬいた。
マイクロチップは目の後ろに埋め込まれていたのだ。
しかもこの中国人が顔を焼かれてこの場にいた。)


・なぜ墓守は死体を損壊していたのか。
(鳥葬にするためだった、なぜなら、チベット宗教だったから。
死刑になったのは親友で、死ぬ直前にチベット宗教に改宗した男だった)


・なぜ男性と接触のない女性が懐妊したのか
(順序が逆で、この時点では懐妊していなかった。
が、調査のためアランが行ってそこで精子を取り出され、懐妊させられる。
しかも子供は生まれたが、母親は死刑になった)


・アランの親殺しは本当だったのか。
アランの本当の父親は誰か。
アランは死刑になるのか。
(アランの父親が誰だかというのが不明だが、シュルツ老人だと言うことがわかる。
そしてシュルツ老人は生物兵器を研究する研究者であった。
アランは死刑から免れ、アランの遺伝子を持つ子供も免れ、一見シュルツ老人が助けてくれた素晴らしい父親のように見える。

が、シュルツ老人の目的は、アランに人体実験として小さい頃に注射したTSウィルスというウィルスが発症するかどうかということだった。
つまり子供達生き延びろというのは、ウィルスのことだったのだ。
アランもだが、アランの子供にも当然入り込んでいるのだろう。
果たしてこの二人の運命は・・・)