ノア・P・シングルトンの告白 (ハヤカワ・ミステリ文庫)ノア・P・シングルトンの告白 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2015/02/05)
エリザベス・L. シルヴァー

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評価 4.5

何しろ登場人物が少ないし、動と言う部分が基本の部分ではほとんどない。
そして回想場面は動であり、あとは弁護士と、刑務所に囚われているノアとのやり取りが中心だ。
そしてノアの殺した女性の母親の手紙がある。
この手紙はある人間にあてられた手紙なのだが・・・
基本ノアの語りで話が進められているがそこが陰鬱だ。
彼女の視点の裁判の場面なども皮肉たっぷりに陪審員制度というものが見つめられている、ある種冷徹な目で。

ノアがなぜその女性を殺すに至ったか。
その前に本当にノアが殺したのか、と言う疑問も出てくる、なぜならノアは絶対に自分がやってない、とは言っていないのだから。ここでの死刑囚としての生活を静かに送っているのだから。

話が進むにつれ、ノアの過去が明らかになっていく。
栄光に包まれた高校生活と大学進学。
そして強烈な男女間のトラブルがある→妊娠して二度と妊娠できない体になる。
ではそのことが殺人の引き金になったのだろうか。
また父子間のトラブルが引き金になったのだろうか。
嫉妬、占有欲、やっかみ、そのような気持ちが引き金になったのだろうか。
常にこの中でノアが誰にも言わず、途中で父に打ち明けた事のひとつはとても重要なファクターの一つだろう。
それが、ノア・シングルトンではなく、ノア・「P」・シングルトンのPの意味だ。

幼少時のノアの姿から、シングルマザーの母の育て方、母のあり方、そして青春時代のノアに起きた男女間のやり取り、など過去に回想していくところで、段々とつまびらかになっていく。
そして本当は殺したセアラに何が起こったのか、というのがラスト手前でわかるようになっている。

ノア・P・シングルトンは、35歳でペンシルヴェニア女子刑務所に10年服役している死刑囚だ。
かつては優秀な人間であったのだが、なぜそこにいるのか。
それは一人の女性を殺したと言う罪によるものだった。
そして処刑の日が半年後に迫ったときに、恩赦申請を検討中と一人の女性弁護士がやってきた、一人の若き美しい男性弁護士を連れて。
女性弁護士はノアが殺した女性の母親だったのだ・・・


なぜノアが殺しに至ったか。
若い男性弁護士に心を開くようになっていく。
女性弁護士が殺した女性の母親、という微妙な立ち居地にいる。

大変興味深くは読んだ、ノアの心理状態もだがノアの殺したとされているセアラの母親の心理状態、そして更にノアの父親の心理状態もまた。
でもラスト、なんだかすっきりしない。
驚きの展開、というのがこれだけ話を引っ張ってきて少ないように思えたのだった。
こちらが想像し得る範囲での展開だったような気がした。

以下ネタバレ
過去の出来事
・ノアは、幼い時にノアが階段から落ちたのが母親の不注意または故意からではなく、強盗によるものだという「偽装工作を」見ていた。
そしてその時に知り合った救急隊員と母親は結婚して、そのあとも母親は離婚結婚を繰り返すのだった。
最初の偽装工作の刷り込み。

・ノアが小さい時に、友人のペルセフォニー・リガの家でペルセフォニーが銃をいじっていて、それをノアに渡そうとしたときに指が引っかかって暴発してペルセフォニーは死んでしまう。
この時、強盗が来たと「偽装工作」する。
そしてそれはまんまと引っかかって、ペルセフォニーの両親も信じて、警察も信じて、誰もノアを疑わなかった。
疑われる前に彼女は母親の車で帰宅していたのだった。
ノア・P・シングルトンのPはペルセフォニーのPだった。

・ノアの本当の父親が現れる。
元アル中で、元服役を何度も繰り返し、そして今ようやくバーを営んでいるが、ちょっとしたことですぐに人を袋叩きにする性癖は直らない。
そして父親との関係を築きなおしているところで、父親にはノアより若い女性の恋人がいることがわかる、それがセアラ。
セアラの母親の弁護士は、これに大反対している。

・セアラは父親の子供を妊娠する。
堕胎の薬をセアラの母親からノアは渡されて、飲ませるように言われるが拒絶。
そしてセアラの母親は今度は当の父親に飲ませるように仕向ける。
そしてセアラはそれを飲み出血する。
セアラは最後までノアが自分に薬を渡したと思い込んでいる、思おうとしている。

・そのセアラの家に行ったノアは、セアラが、告白ごっこをしていたノアの父からペルセフォニーのことを知っているという衝撃的な告白を受ける。
なので、自分も堕胎の薬を与えたのは、ノアの父親(つまりセアラの相手)であり、その陰には母親がいたということを告げる。
心臓の弱いセアラが倒れたのを撃つノア。
そして「偽装工作」をするのだ、またしても、襲われたように(しかしこの偽装は破綻)