2015.03.01 模倣犯
模倣犯〈上〉 (犯罪心理捜査官セバスチャン) (創元推理文庫)模倣犯〈上〉 (犯罪心理捜査官セバスチャン) (創元推理文庫)
(2015/01/22)
M・ヨート、H・ローセンフェルト 他

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模倣犯〈下〉 (犯罪心理捜査官セバスチャン) (創元推理文庫)模倣犯〈下〉 (犯罪心理捜査官セバスチャン) (創元推理文庫)
(2015/01/22)
M・ヨート、H・ローセンフェルト 他

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評価 5(飛びぬけ

セバスチャン!!!
もうセバスチャンったら!!
お尻をぺんぺんしたくなった。

この話、前作の続きだが、前作必読(なんせネタバレがあるのでここからは絶対に行けない)の作品だ。
前作もとても面白かったが、いかんせん、読者側がまだこの登場人物に慣れていないというハンデがある。
そしてどうしても誰がどういう人なのか、というのを探りながら読んでいくという情況にあった。
が!
前作のラストで驚愕の事実がわかる。
そしてその驚愕の事実を踏まえ、それぞれの捜査官の持ち味を生かしているのを堪能しながら彼らの私生活も垣間見ながら(これもまた味わいがある)、サイコパスと対決していくこの作品、息もつかせず読むことができる。
プラス、サイコパスのヒンデ造型が素晴らしいのだ。

もう刑務所に捕まっている連続殺人犯ヒンデ。
彼を捕まえて本にしたセバスチャンが一方でいて、ヒンデがどのような家庭環境で育ったか、どうして殺人犯になったかという経緯は誰でも読むことが出来る。
そして彼の殺人を模倣した連続殺人が始まった!!
ヒンデは模倣殺人に関わっているのか。
どうやって隔絶した刑務所から指令を送っているのか。


自信満々で人と接するのにいちいち突っかかるセバスチャン。
しかし彼はある秘密を持っている、その秘密を誰にも打ち明けることが出来ない、セラピーの先生以外は。
セバスチャンはでもなんとかまた昔の仲間の手助けをしたいと思っているが、特に女性陣から嫌われている。
このセバスチャンが崩れる場面がある。
そこが非常に驚いたのと同時に、
(ああ・・・もう・・セバスチャンったら・・・・)
と思わせる場面でもあった。
女性との短い関係を繰り返すセバスチャンには家族へのある重いもまたある、彼は一種病んでいるのだ。

また病んでいると言えば、殺人犯のヒンデがいる。
彼もまた幼少時の母との関係性で徹底的に人格が破壊されている。
このあたりの描写がどきどきするほど面白い。
そして悪辣で巧緻で人の心に入り込む、どうしたってハンニンバル・レクターを思い出す。
ヒンデがヴァニヤを呼ぶ場面というのは、ハンニンバル・レクターがクラリスを呼ぶ場面を髣髴とさせた。

更にヒンデから悪の継承をした男の造型もまた興味深い。
彼が幼い時に、父が再婚した相手の父親つまり義祖父にあたる人に連れて行かれた地下室で行われていたこと。
不気味な仮面と儀式。
ここでヒンデとは違った意味で人格を破壊されている。
このあたりの描写は息詰まるものがある。

また捜査する側、にもそれぞれ生活があり、夫とうまくいっていないウルスラ(鑑識官としてはぴか一)、そのウルスラと関係を微妙な橋を渡るように続けているトルケル(非常に警察官としては優秀なリーダー)、本当のお父さんそっくりの激しい気性のヴァニヤ(度胸もあり推理力もある)、一歩皮を破りたく欲が出てきたビリー(ITに詳しい)、プラス、ここに傍若無人のセバスチャンが加わっていく。
彼らの生きていく様子もまた読み応えがある。

・・・・
そして、追い詰めて犯人を捕まえた!と思った後でまた一波乱ある面白さがある。
ここでセバスチャンの真価が問われる。
そしてこのラスト!
やっぱりこの女・・・・
次が早く読みたい!

・・・・・・

以下ネタバレ
・セバスチャンはヴァニヤが娘だと知ってから、彼女のストーカーまがいのことをしていた。
このことをセラピーの先生は知っている。

・セバスチャンと関係した女性が殺されていると言うのに気づいて彼は愕然とする。
やたらめったら女と関係しているので、どの人に警告したら良いかわからず呆然とする。
しかも心理療法士に勧められて出たセラピーの会で会ったばかりの女性まで殺されている(というか会ったばかりの女性とすぐに関係するセバスチャンもセバスチャン・・・・)

・ということは、ヴァニヤの母親も関係を持ったのだから危ないと思って警告しに行く。
彼女の一家を調べてくれ、と頼んだ元警察官(トロッレ)は待ち伏せしている最中に犯人と出会うが逆に殺されてしまう。
トロッレは、唯一普通の人で、セバスチャンがヴァニヤとの関係を話した人だった。

・この中で、いつもセバスチャンを毛嫌いしていたウルスラ、が彼と以前関係があったと言うことがわかる(これ、驚いた)更に、別れた理由が、彼女の妹とセバスチャンが関係を持ったと言うことに起因している(セバスチャン・・・いい加減に・・・)

・セバスチャンの娘がヴァニヤということに殺人犯のヒンデは気づいた。
それを話そうとしていたが、話す前に殺された、ビリーに。

・ヒンデは刑務所内で禁止されているネットが出来た状態だった。
また、模倣犯のラルフは、掃除夫として刑務所内に入ってリスペクトしているヒンデと連絡を取っていた。

・ビリーは新しい恋人ミィが出来て、自分が今までIT系のことしか頼りにされていないことに気づき始め改革を始める、自分なりに。
そしてラスト、ヴァニヤを助けるために、ヒンデを殺すのだった、始めて人を殺したのだ。
ヴァニヤと険悪な仲になっていたが、これで、仲直りする。
しかし、ヒンデの残されたパソコンを調べるうちに、セバスチャンとヴァニヤの関係について知りそうだ(と言うところで終わっている

・前作で大間抜けだったハラルドソンは間抜けが更に増して、刑務所長になったのはいいが、ヒンデと無駄に接触して自分の奥さんを窮地に追いやっている(ヒンデに話しすぎて奥さんが捕まってしまう。結果的に助けたが、奥さんはセラピーを受けると行っているところで終わっている。
また彼がヒンデに渡したもの、吐く薬と紫キャベツの酢の物のせいで、ヒンデは吐きまくり救急車に乗り、脱走に成功する。
助けているのは、ローランド・ヨハンソン、刑務所の元囚人だ。

・ラスト、もう一人、セバスチャンとヴァニヤの関係の資料から(調べてくれと言った元警察官が残したもの)、ヴァニヤの義理の父親に関係のない敵意を抱いた人間がいる、それが、押しかけ女房的にセバスチャン宅に入り込んでいる女、えリノール。ここが次の作品につながるのだろう。


・セバスチャンが身を挺してヴァニヤを救ったので、彼らは雪解けムードになった。