2015.03.17 奴隷小説
奴隷小説奴隷小説
(2015/01/30)
桐野 夏生

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評価 4.9

なんだか面白かった!
もっと言えば、なんだかわからないけど面白かった!

最初、SFかと思って読んでいた、そして突然第一話がぶちっと終わるので連作で次々にこの話が展開していくのかと思った。
そうしたら、全く別の話が展開していて・・・これもまた奇妙な話だった。
この話、世界のどこかで起こっている話、と思えばそれはそれは深刻だし実際起こっているのだろうし、社会問題社会派の小説と見ることが出来るだろう。そして何とかしなくちゃと言う気持ちにもなる。
でも、これを現実を踏まえての虚構の話、と見れば、今度はぞくぞくとした面白さが出てくる、そういう不思議な小説だった。

・・・・・・・・・・・・・

最初の話雀は、差別の話だ。
ムラにはびこる強烈な差別、差別された人達はあるところに集められている、そこで舌を引っこ抜かれている女達・・・下層の女性達は必ず長の言うことを聞かねばならない。
15になったら女性は結婚しなければならない。
日本昔話のようだがSFのようでもあるなあと思っていたのだが、途中から(これって今現在でも日本ではないけれど、別の国で形が変わってあるのではないか?)とふと思ったりした。
そのありそう、という描き方が実に見事なのだ。

次の泥は更にSFっぽい。
泥で周りを囲まれている島に女子高生達が拉致されている。
ある時まで脱出しよう、または助けられるかもと言うかすかな希望を持っているが、途中で兵士達に方針が変って処女と処女ではないものに分類される。前に拉致された男子生徒が殺された跡も見た・・・
この世界何なんだ!!
でも泥のずぶずぶ感とか肌で伝わってくるほどだ。

神様男、これはSFっぽくはないが、現実でありそうだ。
姉のアイドル志望にお金をつぎ込んだ母が、その発表会であるオタクを見かける。
これはオタクであるが神でもあるのか。
妹が常に姉を意識しいて自分もアイドルになりたい願望があって飛び跳ねている姿が印象に残る。

REAL。
自分の子供を自殺でなくしたアサミが遠くの国の友達のところにやってくる。彼女の名前はヨシエ。
最後のバスタブの中のキャンドルをともして、そのあとに見た幻影がすさまじい→アサミの娘がバイクで疾走して行く・・・
異国の不安感と彼女の心の動揺が重なり合い増幅しているようだ。

ただセックスがしたいだけ。
これまたSFとか昔話っぽいがどこかに本当にあったのかもしれないし現在もあるのかもしれない、と思わせる短編だ。
炭鉱で働く男達、ひどい環境の中唯一の喜びがある時期に向こう側からやってくる女性の存在だった。
最初この主人公はそれを知らない。
なので、その喜びを知ってから必死になっていく姿が痛ましい。

告白。
郷で殺人を犯して逃げてきたヤジロー。
彼が逃げ込んだ温和な老人のところに泊まらせてもらうのだが、次の日目覚めたら・・・
この話、ホラー寄りなのだが、ラストのほうで部屋の様子が一気にわかるところがすさまじく怖い。→それまで見えていなかった人達が一気に見えるという状況が。多分死者だろう。

山羊の目は空を青く映すか。
これもSFのような話。
囚人達がひたすら監視され働かされている世界がある。
鐘突き番は必ず鐘を定時についていなければならない。
その番に当たるというのは罰のようなものだ。
あるとき、主人公タンネの父親がこれをしていた、ということがわかった・・・そしてタンネもまた・・・