EPITAPH東京EPITAPH東京
(2015/03/06)
恩田 陸

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評価 4.8

これはなんとまあ・・・・
好みがぱっくりと分かれそうだ。
そして私は好きだ、こういうなんだかよくわからない混沌とした話が。
幻視のように東京を見る、その感覚がとてもわかったのだった。

話としては3つの部分に分かれている。
・「筆者」と自分を言っている作家が自分の書いている東京を舞台にした戯曲「エピタフ東京」に行き詰っている。
そしてある日、自分を吸血鬼と名乗る吉屋と言う男に会う(この部分が基本)
・吉屋部分があり、彼の視点で東京が描かれていく、それがdrawing部分。
ここでも自分が吸血鬼で何百年も生きてきて、仮住まいしているホテルの一室で自分が別の時代の子供のときに死んだ、と透視している。
・出来上がりつつある戯曲エピタフ東京。
この3つの部分が紙の色を変えて次々に繰り出される。

吉屋が筆者に言うことの一つに
「東京の秘密を探るためのポイントは、死者です」
この言葉に導かれるように、「筆者」は東京中の死の漂う場所を訪ね歩くのだ、このあたりが非常に面白い、無機質の東京なのにそこから何者かが出てくるような気すらしてくる。

一瞬最初の方で、これは恩田陸のエッセイ?と思わせる部分もある。
でもそこすら幻であって、一体いつのことなのかも判然としなくなりこの話に酩酊してくる。
鏡の中に映っている吉屋。
尾行しているつもりで尾行されていた「筆者」
東京中に鏡があり、東京中に自動販売機があり人々を見つめているという現実とも幻想ともつかないあわいの感じが漂ってくる。

このラストは、それこそ現実に起こった311の物語なのだけれど、この中に組み込まれると、これがいかに異常な出来事であって、東京と言う町はもろい町であったのだ、幻想の上に成り立っていたのだ、というのがよくわかって薄ら寒い気がした。

・・・・
誤植があったのが残念無念。
これだけ装丁に凝っているのだから、ここは何とかして欲しい。