2015.03.30 バラの中の死
バラの中の死 (光文社文庫)バラの中の死 (光文社文庫)
(2015/03/12)
日下 圭介

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評価 4.8

日下圭介作品がこんなに美しい表紙になって甦ったのがとても嬉しい。
今の時代で読むと、時代遅れと思うか?と感じていたが、読んでみて全く違和感がないことがわかった。
それはもう携帯電話とかパソコンはないし、人と人との連絡がとりにくいし、更には刑事の捜査っぷりも前時代という感は否めない。
それでも、あ!あるかも感が今でも十分通用する。
市井の人々を見つめ、そこから生まれるミステリが一つの技に昇華されている。
伏線があとでわかった時にも、伏線っぽい伏線ではないので、あああ・・・これが、と思い返してみるのも楽しいところだ。

この中で表題作は、かつての子役スターがバラの中で死んでいた、この真相が・・・と言う話なのだが、インコ、が大きな役割を果たしている。

白眉なのは、やはり木に登った犬、だろう。
なぜ木に登れる犬がいたのか、という謎、子供同士の言い争いから本当なのだろうか、なぜ?という疑問、そんなものがふつふつと溢れ出てきてそして真相は、実に意外なものだった。

私が一番好きなのは、鶯を呼ぶ少年、の話で、何度読んでも、人の善意というものを考える。
鶯を聞きたがっていた貧しい盲目の老人。
そこに孫娘がいてなんとか老人の願いを叶えてあげようとする・・・その善意は、おばあさんが孫に、であると同時に孫からおばあさんにの善意でもある。
これだけでも話は膨らんでいるのだが、ここにプラス一つの殺人事件が起こっている(こちらの方が実は主題だった)
善意と善意がぶつかり合い実に不思議な化学反応を示す、そういう作品だった。