2015.04.06 悪意の波紋
悪意の波紋 (集英社文庫)悪意の波紋 (集英社文庫)
(2015/03/20)
エルヴェ コメール

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評価 5

面白い。
最後のところの一歩前で、これで終わりか・・・と思いつつ、(まあでもここまで面白かったのだから許そう・・・明るい終わり方といえば終わり方だし・・・)とも思いつつ、(だけどまだページがこんなにあるのはなぜ?)と不思議に思っていた。
ある意味エピローグから始まる物語・・・

最初から読ませる話だ。
二つの話(ジャックの話とイヴァンの話)が同時進行していて、その二つがある時点でぱっと重なると言うのはよくあるといえばよくある手法だ。
けれどその重なり方がとても不思議な重なり方をしている、だって一つは消滅してしまうわけだから。

・ジャックの話。
40年前に犯行グループが出来てこの人達は100万ドルをある人間から強奪する。
それをいわば仲良し5人組が分担をして見事お金を勝ち取るのだ。
ところがある人間とは、強大な黒幕の非常に危険な人物だった、それをこの話を持ちかけた一人の人間以外は知らなかった。
終生その手下に追いまくられる恐怖から全員が離れて暮らすことにする、ジャックもまたひっそりと暮らしている、年に一度の電話帳の暗号に従った再会を除いては誰とも連絡を取っていない。
そんなジャックの下に事情をなぜか知った記者クロエがやってきた・・・・

・イヴァンの話。
冴えない、同僚の皆にそして上司にも嫌われているらしいウェイターだ。
彼は6年前に付き合った女性にまだ未練を持っている。
いつかまたこの女性と復活できないかと日々願っている。
ところが、あるテレビ番組で彼女がリアリティー番組の市庁舎のような形で出ていて、イヴァンの出したラブレターを笑いものにしようとしているのを知る。
なのでラブレターを彼女の家まで盗みに行こうと画策する・・・・

ジャックの方の話は、非常にスリリングだ。
コンゲームのようにさくっと大金を手にした男達が、息を潜めてびくびく生きている、というのがとてもよくわかる。
そしてジャックのところに来た謎の女性クロエ。
彼女が本を出したい、しかも首謀者のオスカルを中心にしたい、というのがなぜか、とジャックは不満に思う。
なぜというのは私も思っていて、これが後半、なぜかと言う理由が全く思いもよらないことだった→クロエはオスカルの娘だった。
クロエは、からてできたわけではない、ちゃんと自分の身の安全を確保していたのだ、ある時間になるとある場所に電話が行くと、そしてそこには何があると。
ジャックもクロエに話せさせられる。
が、
クロエもジャックに話している。
この二人のやり取りがとても読んでいてはらはらするし、ジャックが何かを仕掛けようとしている頭脳船になってくるところも面白い。

これに対してイヴァンの方は、好感は最初の方で持つことが出来ない。
人生に不満を持ち、前の彼女を6年間もじわっと思っていて気味が悪い。
が、一旦彼女へのラブレターを取り戻そうと決意してからの彼は息を吹き返したように行動的になって必死になっていく。
このあたりから読む側ものめりこむように彼の心に寄り添っていくようになってくる。
もしかしてひどいのは、イヴァンより離れていった女ガエルの方の側ではないかとさえ思えてくる。

・・・・
この二つの物語がある一点で集約され、そして片側だけになって、大団円を迎える。
そこまででも面白いのだが・・・

以下ネタバレ
・ジャーナリストのクロエは、ジャックを甘く見ていた。
ジャックはクロエをなぶり殺してしまうのだ。
そしてパコと言う仲間に連絡をする。
ところがパコの仲間はジャックを殺す。
・この中に飛び込んできたのが、ジャックの家を元恋人の家と間違えて飛び込んできたイヴァン。
彼は無実の罪でこの殺人の犯人とされ、服役することに。

・出所してからジャックの仲間アルベールから連絡があり
全ての黒幕はパコだといわれ
しかも、100万ドルと引き換えに渡した名画は偽物であって
贋作者がいたと言う。
本物はこちらが持っていると。
そしてその鍵をもらう。

・ところが鍵を開けてみると
この名画が偽物であった。
一体どこで摩り替わったのか、アルベールが嘘を言っているのか、それともパコにしてやられたのか。
イヴァンは呆然とする。

・最後の最後に、出てくる真実。
「全ての人生の波紋を見つめる大金持ちの人物がいた。
神のような存在だが、彼がある一つの小石を投げる。
そしてその波紋があらゆるところに・・・
イヴァンは導かれるようにして彼の家に行く。
彼テオドールの投げた小石は、40年前に「犯罪の首謀者のオスカルに、料理人をしていた屋敷の名画の話をした」
話をしたのはこの男」だった。

偶然の巡り会わせを引き起こすアシストが彼だったのだ。