死のドレスを花婿に (文春文庫)死のドレスを花婿に (文春文庫)
(2015/04/10)
ピエール ルメートル

商品詳細を見る


評価 4.8

面白かった。
その女、アレックスの作者の作品なので、それはそれは警戒しながら読んでいたのだが・・・・

ソフィーという精神を病んだらしいベビーシッターの目の前に、見ている子供の死体が。
混乱してソフィーは子供を抱いて茫然としている。
夢遊病状態、そして忘れ物が異常に多い、行動が変、記憶にない行動をする、の過去を持つ自分自身を信じきれず、ソフィーは逃亡を始める・・・
ところが、行った先行った先で自分が殺したと思われる死体が出てくる。
指名手配されているのだが、容易に見つからないのは、ソフィーがなかなかの知恵者だからだ・・・


ソフィーの章でソフィーが過去にどういう生活をしていたか、が徐々に明かされていく。
なぜ大学まで出ていながら、ベビーシッターをやらざる得ない状況に陥ったのか。
一体ソフィーは結婚していたのか否か。
そして、「もし最初の子供の死体が彼女ではない犯行」だとしても、じゃあそのあとの次々に彼女の訪れるところに起こる殺人事件は、彼女の犯行以外あり得ない、と思わせられる、なぜなら、彼女しか行っていない場所だから。

また過去がつまびらかになっていくにつれ、ソフィーの落ちていく様子というのもつぶさに見ることができる。
食べ物も喉を通らなくなるくらいに細くなってしまったソフィー。
それでも生き抜くために必死に偽名を使い、彼女の新しい人生を取り戻すため結婚と言う手段をとろうとする・・・
ここまでがソフィーの章。
・・・

そして次の章、フランツでがらっと様相が変わっていく・・・

このミステリは、ある一定の印象を持っている人がどんどん変わっていく、というところで、その女アレックスを彷彿とさせる。
また、心理戦、頭脳戦の側面もあり、そのあたりのやり取りもとても面白い。
ラスト、そして私は驚愕したのだった。

ただ、後半がちょっとだけ急いでいる感じがした。
後半、もっともっとフランツを書き込んで、ソフィーを書き込んでいけば!
それぞれの殺人の方法とかももっと書き込んで欲しかった。
愛情という不思議な感情ももっともっと描いて欲しかった、憎しみから生まれる愛情と言うのもまたあるだろうから。

以下ネタバレ
・ソフィーをずうっとストーカーしていて、周りを殺していったのもフランツという男。
ソフィーの写真を撮り、ソフィーのパソコンをハッキングし、ソフィーのいくところを把握しているフランツと言う男。

彼の母親が、ソフィーの医者の母親の目の前で飛び降り自殺した。
それを逆恨みしていて、もうソフィーの母親自体は亡くなっているので、ソフィーを追い詰める手段に出たのだった。
ソフィーの裕福な暮らしをも妬むフランツ。
ソフィーの夫の交通事故を仕掛けたのも、車椅子を落としたのもフランツ。
会社に提出する写真の中に致命的なエロ写真を入れ込んだのもフランツ。
ソフィーの義母を殺して、夫婦仲を悪くさせたのもフランツ。

そして薬をすりかえ与え続けていた。
家の鍵をコピーし出入り自由だったのだ。盗聴もあるし、目の前の家に部屋を借りて盗撮もし放題だった。

・ソフィーが追い詰められ自分が殺人犯だと思い込み指名手配になっている。
そして最後の手段で、騙して結婚相手はなんとそのストーカーのフランツだった。
だから騙したつもりが騙されている、フランツに。
しかし途中でソフィーは気づく、昔バイク事故の人間がフランツだと(当時の証明写真を持っていた、フランツが)

・ここから騙し騙されが始まる。
ソフィーは全てを把握して、フランツに復讐しようとした。
フランツに悟られないように、親友、父親の手助けを借りる。

・フランツは、自分の母親を愛していたのでこの犯行に及んだわけだが。
最後の方で、ソフィーの母親の診断書が出てきてフランツを憎んでいた、死ねばいいと思っていた母親像がわかって衝撃を受ける。

・ところがこの診断書は、ソフィーの父親が偽造したものだった、自分の娘を苦しめたフランツに打撃を与えるために。