評価 5

とても良質なヤングアダルト向けの小説だった。
大人が読んでも楽しい!
なんといっても、あのエミリー・ディキンスンを主人公にすえ、しかも彼女が探偵役というストーリーにおおいにおおいに心惹かれる。
エミリー・ディキンスンといえば、生涯ほぼ生家のアマストから出たことがなく、白い服を着て詩を書いていて、家族とともに世捨て人?のような雰囲気をまとっていて・・・・というのが印象だった。
彼女の写真も見たことがあるけれど、なんとも近寄りがたい。
けれどそこから生まれる詩の数々は実に魅惑的であり、今でも通じると思われる詩がたくさんあり、自然を愛し植物を愛した彼女の生き方というのが現れて・・・・というのが印象だったのだが・・・・・

・・・
ここに出てくるエミリーのなんて生き生きしていること!
興味がたくさんあり、外に向かって羽ばたこうとしている少女のエミリーの可愛さと頭の良さと行動力が読んでいてこちらの胸を打つ。
しかも、途中に実際のエミリーの詩が時折挟み込まれている趣向も心憎い(物語に関係している)

冒頭、「鼻に蜂をとまらせる」という実に奇妙なことをしようとしているエミリーは一人の男性に出会う。
彼は自分の名前を名乗らず、Mr.Nobodyと名乗るのだ。
ところがその後、エミリー家の池で死人が出る。
それは奇しくもエミリーが出会ったMr.Nobodyであった・・・


ここからエミリーの八面六臂の活躍が始まる。
聞き込みから始まって、死んだ男が誰なのかを突き止め、更には植物から彼がどこからきたかというのを突き止める(この突き止める方法が、彼女の植物好きの友人に聞いてわかったというのが後から考えると実に皮肉なことだ)
途中で、妹のヴィニーも加わって探偵は続く。
ヴィニーは実際にもいたようなので、ここもまた実際のエミリーとリンクしていて読み甲斐がある。

Mr.Nobodyとしたちょっとした会話がヒントになっている。
さらに、彼に対して小さな目立たない恋心をエミリーが持っている、というところも見逃せないだろう。
この物語、探偵の話でもあるけれど(ミステリ系)、ほのかな恋の始まり、という乙女の部分もおおいにある。

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エミリーの日常も描かれていて、寝込んでいる(多分心気症とかそういうの)お母さんに代わって、パン作りや洗濯や日常の雑務に追われている。
詩人のエミリーを知っているだけに、(そんなことをしていないで、詩作りを!)と折々に思ってしまった(でもメモを取っていてそこも興味深い。)

本当のエミリーの実像と、これは小説だけれど小説の中のエミリーがリンクしているところも読みどころだ。
実際に妹のヴィニーはいたわけだから。

これだけ楽しかったので、次が、若草物語のオルコットが主人公の話らしいので是非次も翻訳していただきたい。