2015.06.05 夏の沈黙


評価  4.8

家族もいて仕事もあり成功している、と思われる女性キャサリンがいる。
ちょっとした悩みは、息子が思うような仕上がりにならず、親が思い描いていたような仕事に就かなかったことぐらいだ。
そんな女性の元に突然送られてきた小説に自分のことが書かれていた。
しかもそれは自分にとって誰にも伏せていて忘れようとしていた究極の出来事が全てあからさまに描かれていた・・・


とても魅惑的な出だしだ、だって誰も知らない過去が本になっていて、それを誰かが送り届ける恐怖ってものすごいだろうから。
一方でもう一つ物語が語られる、それは一人の女性が死んでしまって取り残された旦那が、女性の持ち物の中からあるものを発見するのだ。

本の謎がもうちょっと引っ張ると思ったら、ここは案外あっさりとわかる。
それよりも、なぜこの女性は過去をひた隠しに隠すのか、という方に興味はシフトしていく。
仲のよいらしい夫にも語れない過去とは何か。
これと、息子との関係がうまく行っていない、常にギクシャクしたものだった、挙句に息子は思うように育たなかった、というのに関係しているのだろうか。
どれだけひどいことを見た、またはしたのだろうか、彼女は。

最初、誰が亡くなっているか、その誰かは誰なのか、人間関係はどうなっているのかと言う状況がつかめない。
だから全体像が見えてくるのは、中盤あたりからだ。


そしてこの本が、息子のところに送りつけられ、最終で、夫のところに送りつけられ、女性の職場にも送りつけられる。
このあたりの自分の当たり前の生活が崩壊していく様がすさまじかった。
もうどこかで言ってしまえ!真実を!なんだかわからないけど!と読み手は思ってしまう。
そして途中でその何かというのがわかる。
わかった時に、夫に言えなかった理由もまたわかるのだ(とその時点では思った)

が、この物語、まだ続きがあった、そこに意外な別の真実が残っていた。
さらに、私が一番最後のあたりで語られるある一つの事実(女性も知らなかった事実)がひょっこり出てくる。
ここがなんとも物悲しい。

・・・・
全体に読ませるし、読んでいる間は取り付かれたようになるのだが・・・
読み終わってみると、ちょっと釈然としないことがいくつかあった。

以下ネタバレ
・最初の本は、ナンシーと言う女性が書いたもの。
フィクションで名前を変えているが、自分の亡くなった息子が年上の子持ちの女に誘惑されひと夏の経験をして利用され、そこで子供が溺れかけたので、それを助けようとして死んだ、となっている。
これが夫に写真とともに送られて最初夫が信じたもの。

しかし実際は
亡くなった息子は年上の子持ちの女を盗撮し、部屋まで行って何度もレイプしたと言うレイプ犯人であった。ただ、子供を助けたのは事実。

・亡くなった息子がレイプ犯人というのを、その父親はすぐに信じたのだが・・・・
部屋にポルノがあったとしてもそれは年頃の男の子なのだから普通だ。
どこかに兆候があったのだろうか、それも強烈な。
そこがちょっと書き方が薄いと思った。
母の見る息子像、父の見る息子像が違っていると言っても・・・
母はそして、これを信じていたのだろうか、自分の中で作り上げた物語を。
ただの物語を書いただけなのか。

・亡くなった息子が旅行途中で別れた恋人サシャへの言及が欲しい、もっと。
この恋人の母親と亡くなった息子の母親が口論している。
でも内容がわからないのでもどかしい。
きっと異常なことがあったのだろうが、ここを書いて欲しいと思った。

・レイプ犯人、なんで突然子供を助けようと思ったのだろう。
これはレイプ犯人の父親が考えるようなことなんだろうか、自分がしたことが後戻りの出来ない道で(レイプ)、命がけで危険なことをする、というよりも、命を犠牲にして子供を守った・・・これも幻想か。
というか、なんでレイプ犯がいるかもしれない浜辺に再びこの女性は子供連れで行くのか、ここもよくわからない心理だ。

・一番胸突かれたのは、
このレイプされていたのを、子供が続き部屋で寝ていたと思っていたら、見ていたこと。
意味がわからなかっただろうし、途中で寝に行ってしまっただろうが
その写真が残っているというのが最後の最後でわかる。
これが子供がおかしくなった遠因か?