評価 5

つんのめるようにして読み終えた、いやはや面白い。
前作のシャイニングを読むのはもう必須事項だろう。
もし以前に読んでぼんやりの記憶だなあ・・だったら読み返した方が良いと思う、前作を受け継いでのこの作品だから。
(ということで私もこの作品にめがけてシャイニングを読むと言う準備を先月した。)

以前のシャイニングでは「かがやき」を持っているダニーがまだ幼い子供だ。
そして彼が両親と共にあるホテルに住む、というところから始まる怪異譚だ。
前作がなんだかよくわけのわからない幽霊的なもの、過去の亡霊からの怪異(しかも広範囲にそれが及ぶ)だとすれば、今作はわけはわからないものの、吸血鬼のようなもの(かがやきのある子供からその力を吸い取って生きている人間の形をした怪異集団)
という形がある。
だから実態がある分、前作より戦いやすいだろうなあと思った。

今作ドクター・スリープでは、30年たって幼いダニーは成長し、大人になっている。
前作で生き延びた、といった感のあるダニー(ダン・トランス)は、どうやって生きてきたのかというのが最初の方で簡単に説明されている、ここも胸を打つ。
あれだけ父の飲酒癖で辟易していたのに、自分がどっぷりとつかってしまったという悲劇があり、かがやきゆえにそこから抜け出せない。かがやきはかがやきでもあるがいろいろな悪しきものを見せてしまう悪魔の光でもあるのだ。
前作の心の中の友トニーも出てくるし、前作のディック・ハローラン(悪しきものが出た時の対処方法を教えてくれる、ここは重要)も出てくる。

話は3つの部分に分かれている。
・ダン・トランスの話
・30キロはなれたところで強烈な輝きを持って生まれてきたアブラという女の子の話
・全米中をキャンピングカーで何食わぬ顔をして回って、かがやきのある子供を誘拐して解剖してその呼気を吸収する悪魔のような吸血鬼のような集団真結族の話。
これら3つの話が最後融合されていく。
当然ながら、強大な力を持つ少女アブラを真結族は欲しがる。
アブラはそれを察知していて、そして同時にテレパシーでダンに最初から接触している。
ダンがアブラのために戦い、アブラは今までに殺されたかがやきのある子供達に涙を流し怒り狂う。
そして真結族は、ローズを筆頭として強大な力で彼らを封じ込め、力を自分たちに取り込もうとするのだった。
(彼らがはしかという実に単純なことで力を失っているのが悲しくも笑える事実だ)

特にアブラ場面が非常に面白い。
彼女の力が強大すぎて、お誕生日にスプーンが天井に全部くっついていたとか、彼女の力のコントロールが難しいとか、小さい時の話も読ませるし、長じてからのコントロールが聞くようになってからダンとの交流(ダンの部屋の黒板にいきなり文字が書ける、アブラは)もまた読ませるのだ。
また真結族のローズが、アブラの頭の中に入り込もうとして逆にアブラのしかけた罠にはまるところなど読んでいて痛快だ。

飲酒癖と暴力癖のあるダンはある時町の女ディーニーとベッドにいる。
そこで起きた時に、彼女の財布からお金を盗む、小さな子供が放置されているのに気付きながら、子供が虐待をされているのに気付きながら、その部屋を出るのだ。

このイメージがずうっとずうっとダンには付きまとう。
最終的に彼女達がどうなったかというのもダンにわかってしまったからだ。
この後悔共にある町に降り立つのだが・・・・

この町こそが人生の転機になる場所だ。
弱くなったとはいえ、ダンのかがやきはここで発揮され、トニーの呼ぶ声がここで聞こえるのだ、フレイジャータウンにようこそ。
ここで友人とめぐり合い、断酒会に入り断酒を始め、ダンはようやく静かな落ち着いた生活を取り戻すことが出来る。
このホスピスでダンは死に行く人のケアをするホスピスで働くことになりドクタースリープとまで呼ばれるようになる。


一方でアブラと言う少女がいて彼女は幼い時からかがやきの片鱗を見せている。
両親が平凡な女の子を望んでいるのをわかって途中まではそれを隠しているのだが・・・・
自分と同じような能力を持つ幼い野球少年が残忍な方法で殺され、しかもかがやきを奪われていた。
それを一枚の写真から察知し、自分もまたねらわれているというのも感じ取るのだった。

真結族との決戦も非常に楽しい。
楽しいと書いては語弊があるか・・・・
頭脳戦でもあり、アブラ側のブレインは間違いなくダンで、彼が綿密に計画を立てるのだ(ここが計画が最初に明かされないので、計画が実行された時におおいに驚くことになる)
残酷な場面、凄惨な場面もあるには違いないが、何しろこちら側にはアブラがいるのだ。
アブラさえいれば、勝つ!というような心がこちらにも浮かんでくる。
そしてまた最後の最後で、こうやるとは!
また途中で衝撃の事実がわかった。
全く私は気付かなかったし、思ってもみなかった。

この話、悪い側(真結族)よりも良い側(ダンとアブラ側)の方が優れている、有利である、というのが随所に出ているので、そこは安心して読むことが出来る。
そこがはらはらどきどきとは一線を画しているのだが・・・
これはこれでとても読んでいて心地が良い。
もしこれが力が拮抗している物語であったら、また別の面白さはあっただろうが。

静の部分(ダンが自分の中に入る部分とか、人の死に関わる部分とか)と、動の部分(真結族との戦い)とが見事に調和され読ませる読み物になっている。
同時に、記憶の中で常に常に自分の両親(特に父親)を考えているダンの姿にも胸打たれた(だから前作読み、が必要だと思った)

以下ネタバレ
・ダンとアブラは両方を交換するという技を駆使する。
そこにいる肉体はダンでありながら、アブラの目を持つと言うやり方。

・ダンとアブラが実は叔父姪であったという衝撃の事実が途中で明らかになる(かなり後半だが)
ダンの父親が大学勤務していた時に、アブラの祖母がそこにいたという事実。
二人が愛し合って生まれたのがアブラの母、であると言う事実がわかる。
かんしゃくもちという遺伝、また口に手を持っていく遺伝(これをアブラがやっていた時に、なぜ私は気付かなかったんだろう!)

・アブラの曾祖母もまたかがやきをやや、持っていた。
彼女が癌で死ぬ直前にダンと話す。
その時、癌の息吹のようなものをもらって、ダンは身体の中に封鎖している。
そして、最終決戦の時に、それを一気に放出して真結族に吸わせて殺すのだった。


・下巻の92ページ上段後ろから4行目
娘にむきなった→娘にむきなおった、ではないのだろうか?