2015.07.24 薔薇の輪


評価 4.7

帯の「すべては驚愕の結末のために」というのはちょっと煽り過ぎ、じゃないだろうか。
驚きは確かにあるのだが・・・・
こういう帯で期待度のハードルが上がってしまう功罪がある気がした。
いい時代のこなれたミステリ、といった感じがした。
ある一定のレベルは保っているのがさすがだ。
ただ、全てが並べられていると言う感じの書き方なので、切り替わりに乏しい。
登場人物が少ないのもこれにプラスされて陰影がちょっと淡い。

・・・
話は二つの謎が絡んでいる。
ひとつは、身体の不自由な娘が匿われていた場所から失踪してしまったと言う事件。
もうひとつは、刑務所あがりの男が相棒の男と共に娘に会いにきてそのまま二人とも死亡してしまうという事件。
この二つがあるのだが、どうしたって、「生きている身体の不自由な娘」がどのように家を出たのか、または連れ出されたのかと言うところの方が重要になる、だって娘をなんとか救出しなければならないから。
殺人であろうとなんであろうと、死んだ者は戻らないが、生きている者はなんとかして助けてあげたい、何度も言うように身体が不自由なのだから。

この話の根本は
「ロンドンの女優のエステラが絶大な人気を誇っているのは、身体の不自由な娘との交流を綴った新聞の連載エッセイにある」ということだ。言い方は悪いが、娘は飯の種でもあるのだ。しかも身体の不自由に成った顛末は、現在刑務所に服役している夫の暴力による、というところが世間の耳目を集めている。
ところが、この夫が持病悪化のため特赦で刑務所出所と言うところから話は動き出す・・・

最初の方の交流のエッセイそのものも嘘だと言うことが少数の人のみ(新聞記者も含め)知られている。
そして夫にこういうことになりましたよ、と過去のDVで娘が傷ついたと言うのも嘘、
夫が娘に会いにくればそこに娘はいないと言う嘘、
更に嘘は続く・・・
この嘘の連鎖がずうっと続いて行って、後半よく読んでみると、最初の方の嘘すら嘘というなんだか何重もの嘘に囲まれた小説ということになっているのだ。

・・・・
前半部分の普通のミステリと言った感じのところから、後半警部チャッキーと容疑者達との丁々発止のやり取りが始まりこのあたりは二転三転して面白い。