2015.07.31 BABEL


評価 4.9


お・・面白いかも!
前作を読まないでいきなりこの連作集だが、前作を読みたくなるくらいに楽しかった。
話は復讐代行業者にまつわるさまざまな事件の話だが、誰が誰を騙しているのか、というのが最初のうち見えてこない。
後半になってどの人がどういう立ち位置だったのかというのがようやくすとんと落ちる。

復讐代行業者が義波(ぎは)という見た感じ茶髪の(色々な髪形をしているのだが)ちゃらい若者。
彼がどの作品にも出てくる。
復讐、なので誰かに依頼されている、その依頼も復讐、なのでかなり暗い内容が含まれている。

最初の話バベルは、地上の何十階の展望室で集まった人達に刃を向けたある一人の男の物語だ。
なぜ彼がその人達に恨みを持ったのか。
しかも殺戮をその人達に決めさせようとする残忍な方法をとろうとしていたのか。
それは、過去の出来事から始まる・・・
過去高校生の時にここで万引きの疑いをかけられた男。
そこから人生が狂い、幸せな人に嫉妬している男。
その引き金となったのが、スマホで連絡を取っているアル一人の同級生で、彼は順風満帆な人生を送っていることをブログに記している・・・・

義波の登場が鮮やかであり、ラストもとても印象深かった。

ナイトジャーニーはかなり怖い深夜バスの話だ。
大変よく出来ていると思った話だ。

人をなぜか殺してきた男が逃走している。
最初から人を殺してきた、それはでも正当なことで、そしてその時に返り討ちにあってやや足を怪我している、けれど愛する妻の元に帰るという意志を持っている。
この話、面白いのは、「なぜこの男が殺したのか。この男は何をしていた人なのか」
というのが義波が出てくるまでわからない。
男側の一人称語りなので、どうしても男が悪くないんだっぽく感じてしまうのだ、途中までは。
この男は詐欺師であって仲間を殺した。
自分では誰も傷つけてないと思っているが、お年寄りを騙して取ったお金というのがあり、義波はそのうちの一人から、自分の笑顔を最後見せてあげられなかったと言う老女の依頼で動いていたのだ。
そしてバス全員が義波の仲間。


グラスタンクも、また騙される。

最初、おっとりとしているOL美咲が普通に生活をしているところから始まる。
彼女が突然昔の高校生の時の旧友で今はキャバ嬢をしている結衣子に呼び出される。
彼女と結衣子ともう一人、都会の雰囲気を身につけた希は三人組で仲が良かった。
ところが希は事故死。
結衣子は、それが事故死ではなく当時希が付き合っていた中年男性の殺しではないかと言い張る。


この話、結衣子がキャバ嬢をしているというところで、フィルターがかかる、普通の考えだと。
つまり結衣子に対してマイナス方向の考えがよぎるわけだ。
実際は、おっとりしていた美咲が希を殺していたのが判明する。
一生懸命キャバクラでお金をためていたのは、希の死の真相を突き止めるためのものだった


スプリングブレイクは、一人のカフェ経営の女性が、おそらくは乱暴された一人の女性を助けて住まわせる、というところまでが一つの話。
そしてそこに義波がやってきて、カフェ経営の女性が昔やっていたことを暴くというところがまた一つの話。
しかしそのあと話がひっくり返る。
更にラストのひっくり返り。
カフェ経営者吉野たまきは昔人身売買に手を染め、売春行為にも携わっていた。
ところが、ここで真相がまた明らかになる、この女は吉野たまきではない。
義波とその後ろにいる志尾という男が見えてくる。
そしてここにお世話になっていた女性もまた・・・


バビロンは最初の話に戻る。
戻るが、志尾という黒幕が出てくる。
警備員の視点が悲しい。