2015.08.08 黒百合


評価 5


数年ぶりに読み返してみた。
やっぱり面白い。
全てがわかっていて読んでみても、あの場面でやっぱりぎょっとする。
ミスディレクションが色々なところに張り巡らされていて、そこを読み解くのも楽しい。

私と一彦。
夏休みに一彦の別荘に招かれた私は、そこで一人の少女香と出会う。
彼女と僕ら二人の三人の輝ける日々・・・・
どちらも香を好きだけれど、二人ともお互いをけん制しあっているそんな初恋の日々が目の前に広がっている、六甲の夏の日差しを浴びながら・・・


淡い恋物語、この部分がどうでも良い、と思う人はこの話に向いていないのだろう。
ここがあるからこそ、別のミステリ部分が際立つのだ。
時制が飛んでいる、しかもそれが西暦で書かれているのと昭和で書かれているのに分かれているので非常に混乱しやすい(ここも作者の意図通り)
更に、物語の中枢になっている色々な出来事とか現象が、別の人で現れている。
そのあたりも憎い演出だ。

繊細な技巧があるミステリ。
大好きなミステリだ。

以下ネタバレ

・この中で、
過去、黒百合お千と呼ばれた女性が、六甲の女王と思わせるテクニックがある。
彼女は完全にフェイク。
ここがもう完全にそう思ってしまわせるところがすごい。

・文章中、何度も足が悪い人、愛人を持っている人、などが色々なパターンで出てくる。
しかし本来途中の文章の「人を殺し銃弾で足を怪我した人は」別の人、だった。

・一彦のお母さんが義母であり、彼女の足が最後義足でぽんと外れる場面は何度読んでも度肝を抜かれる。
彼女こそが、黒百合お千であり
一彦の父、「私」の父がかつてヨーロッパでであった女性。
そして、彼女が電車の車掌であり運転士であり
香の叔母が恋した女性。
ここが女性であるというのが、
・車掌と言うのでおのずと男性と思わせる
・叔母という女性が恋しているので、男性と思わせる
・写真を見ても見目麗しい制服姿だ
・愛人がいてそれが人妻だ(つまり、女性相手なので男性と思わせる)
ということで、男性と最後まで思わせている。

黒百合お千は、かつて香の父と恋仲であった。
しかしヨーロッパで駆け落ちしようと嘘を言われ、そこで香の父を待っている時、一彦の父や(後に再婚)「私」の父らの一行と出会う。
しかし香の父は来なくて捨てられる。
日本に帰ってきてから、自分に惚れたのが香の父の妹(香から見ると叔母日登美)
それを知った香の父は、お千を殺そうとするが、逆に殴殺される(お千はこのときに銃弾を浴びて片足を失う9
香は妾腹の子。
つまり香の父はどうしようもない奴で、
黒百合お千→結婚した相手(香の義母になる)→香の母(愛人)
と女を騙して手玉にとっている。
兄の死を疑問に思って真相をほぼ知った男が黒百合お千を脅迫したので、この人も殺す。
つまり

一彦と将来的に結婚した香は、

自分の父、と
自分の叔父、を
殺した女性が姑

になるわけだ。
ひとでなしの男達とは言え。