評価 5

とても誤解していた。
この作者が台湾出身の作者というので(もしかしたら、全く違う異文化を書かれていて、そこで起こることに共感も何もないんじゃないか)と勝手に思い込んでいたのだった。
今はなき「中華市場」と言われても、それ自体を知らないのだから、どうなのだろうと。

私の勝手な思いに反してとても優れた読ませる作品だった。
なぜだろう、懐かしくなる、この話を読んでいると。
昭和の時代の子供達の生活とオーバーラップするからか。
そして何より面白いのは、ここに歩道橋の魔術師という特殊な人間がどの話にも(1話だけ微妙な登場だが)出てきて、この人間の不思議さを出すことによって、過去の自分と家族と現在の自分のおかれている状況というようなものを見事に炙り出しているところだ。

魔術師は手品師だ、本当は。
種も仕掛けもあるものを売っている。
そして子供たちは買ってはそれがただの紙切れだったとか、ただの他愛もないものだったというのを知っている(というのが第一話で出てくる)
ところが!!
この手品師は、ただの手品師ではなかった・・・・魔術師だった・・・
魔術師と子供達とのさりげない交流、そして魔術師の本来持っている姿とは?力とは?
ここが最大の読みどころだ、不思議な世界に連れて行ってくれる。
またこの話、「死」にも彩られている。
不思議な話にまぎれているので、そして話はさくさくと進んでいるので目立たないのだが、自死も含めて多くの死が横たわっていると言う物語だ。

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中華商場というのがあり、そこは商店を営む家族が多数住んでいる。
なんらかの商売をして生きていくさして金持ちでもない人達。
そしてその子供たちはそれぞれの環境の中で生き生きと暮らしていた。

中華商場は8棟ある。
忠、孝、仁、愛、信、義、和、平と名づけられ、愛と信の間の歩道橋に手品師がいた・・・


最初の話で、魔術師がする種も仕掛けもある手品のねたにややがっかりする靴屋の息子がいる。
でも彼にも解けない唯一つの黒い小人が踊る技というのがある。
その種は教えてもらえない・・・
しかしこの話、ラストがすさまじい、そしてそこがとても良い。
→(仲良くなった暁に魔術師の目玉をくれる・・・

また、小さい頃に仲良かった三人組が同窓会のように出会うひととき。
それぞれの過去と今現在の境遇とが重なり合うところでぐっと来る話だ。
そこから、一時期そのうちの一人の男の子が行方不明になっていたというのをもう一人の男の子が思い出す・・・
これもどこに行っていたのか、というのが戦慄するような出来事だった。
魔術師が住んでいた屋上。
そして男の子達が以前いたずらで書いたエレベーターの99階に(押せた)行ったら、自分が透明の人間のようになって、みんなの間をうろうろしていたと言うのだった、行方不明の間。