2015.09.09 朝が来る


評価 4.4

(決定的なネタバレはありませんが、途中まである程度筋に触れます。
決定的なネタバレは最後に伏字でしています。)

私の中でとてももやっとする小説だった。
読ませるのだ、ともかくも。

冒頭の幼稚園トラブル(自分の子供が他人の子供をジャングルジムから落とした、と誤解される)エピソードから、この母親が懸命に自分の息子を信じている母親というのはわかる。
そして次なる展開で、実はこの母親と息子が実の母子ではなく養子縁組した母子だということが開かれているのだ。

そこに、自分がその子供の母親なので返して欲しい、周囲にばらされたくなくそれが嫌だったらお金をよこせという若い女性が現れる。
ところが、男の子の今の両親(養子先)は、この母親からの受け渡しの時に、母親に会っていた。
目の前にいる女性はその人とは違う。
一体誰なのか、この女性は。
そして何の目的なのか。

・・・・・・・・・・・・
一つの話は、この夫婦がいかに絶望的な状況で子供を欲しがっていたかというのがよくわかる。
ここもまた読ませるし胸がつまる。
いつか子供は出来るだろうと暢気に思っていたら、夫が無精子症と言われた血が引くような事実が厳然としてある。
そこから始まる不妊治療・・・双方の両親からのあれこれ・・・そして仲介者がいて養子縁組に至るまで・・・・
ここで、赤ちゃんの時の子供が、生んだばかりの中学生から受け渡される、広島のホテルで。
まずここでは一切、相手側(中学生の事情)はわかっていない。

もう一つの話は、中学生がなぜ妊娠するに至ったか、という物語だ。
ここまた、とてもわかる、一つの石に躓いて、次々に落ちていく様子が手に取るようにわかるのだ。
教師の両親と、真面目な姉に囲まれて閉塞感のある普通の少女。
彼女の苦悩と葛藤が描き出されている。

・・・・
養子縁組に至るまで、の夫婦の物語がその部分が薄い、と思った。
二人が熱烈に子供を欲している、というのがなんとなく伝わらない。
成り行きで子供を養子縁組の仲介者からいただくことにした、二人の合意があったというように見える。
ここはもう書き込んで欲しい、不妊治療をあきらめて、講演会に出て、そのあと、のことを。

あと中学生の方は後半やや飽きたと言っていいだろうか。
落ちていくさま、というのが荒唐無稽のように見える、まだ高校生だったのだから・・・・
両親はどうしていたのかそこも見えない。
また中学生が後半に、子供に対する思い、というのもよく見えてこない、後半。
自分が落ちていくときに子供のことをかすかにでも思っているのだろうか。
自分が両親特に母親に反抗している時に、自分を生んでくれた母親と思わなかったのだろうか。
このあたりがもやっとするところだ、読ませはするのだが。

とはいうものの、ラスト、光が見えるのは確かだ。
無邪気な子供の姿が光る。

以下ネタバレ
・訪ねてきた女性は本当の母親だった。
最初に出会ったときから色々ありすぎて、顔つきも態度も様変わりしていたのだった。
それに自分ではじめて気付くのだ、一体あなたは誰ですか、と子供の養子先の両親に問い詰められて。