評価 5(飛びぬけ

6年ぶりの再読、新訳が出たので。
最後の一行の衝撃は健在なり。

・・・・・・・・・・・・・

起承転結と言うことを考えると、このミステリの「起」は、クインと言う男がカジノですってんてんになってヒッチハイクで適当なところで捨てられて、そこがある宗教団体の場所の近くだった、というところだろう。
この掴みが素晴らしい。
宗教団体の中に入れてもらえたのはいいが、ここの大師さまという一番偉い人には会えない。
皆がニックネームを持っている場所だが、救済の祝福の修道女に助けてもらう、食べ物をもらい休ませてもらったりする。
祝福の修道女が、クインが出て行くときに頼み事をしたことから話は展開し始める。
パトリック・オゴーマンという男がチコーテという街にいるがどうしているか調べて欲しい、と言うのだ、隠していた(お金は全て喜捨しなければならないので)
お金をクインに渡して。

ここでクインが依頼を断っても良かったのだ、でも彼は断らない。
そして実際お金を持って訪ね歩くと、なんとオゴーマンは5年前に死んだという、ある嵐の夜に車の事故で。
しかし不可解さも残る死に方だった。
話を聞けば聞くほど、平凡な男、さして頭も働かないで妻に助けてもらった男オゴーマン。
そこには魅惑的な未亡人が子供二人と共に残されている。
このあたりから、起承転結の「承」になる。
調べていくと同時にこのあたりでもう一つの事件が起こっていて、それは銀行での使い込みの事件だった。
その当事者の女性は今、刑務所にいる・・・・

・・・・・・・・・・・
最初にたまたま入った宗教施設にまた入ることになったクインがそこで見たものは、あれだけ親切で普通に話すことの出来る人だった祝福の修道女が骨抜きにされてしまったことだった。
大師と言う人にも会って彼への反発も強めるクインがいる。

巻き込まれ型の話ではあるが、
・死んでしまったパトリック・オゴーマンの奥さんマーサの証言
・地元週刊誌の発行人ロンダの証言
・逮捕された女性アルバータ・ヘイウッドの証言
・アルバータの兄のジョージ・ヘイウッドの証言
・アルバータ、ジョージの母親の証言
・ジョージの共同経営者でジョージに気があるウィリーの証言

そして宗教施設の中の
・カーマと言う少女の証言


これらが実によく配合されて一つのミステリを物語っている。
塔と言う特殊な場所の特殊な宗教の胡散臭さ、と、そこにいる特別な名前がつけられている人達の個性も鮮やかに描き出されている。

そしてラストの驚きと言ったら。

以下ネタバレ

・パトリック・オゴーマンは生きていて、舌の修道士を名乗って、宗教施設で暮らしていた。