2015.09.18 王とサーカス


評価 5

万人向け、ではないと思った。
そしてある部分を好きな米澤穂信ファンは違うと思うだろうなあとも。

なぜなら、一種社会派でもあるからだ。
そしてミステリの部分はあり伏線もある。
けれど、あまりそこには私は感心しなかった、ちょっとわかりやすすぎだろう。
それよりも主人公のジャーナリスト太刀洗万智の心の動きの方が細かく描かれていると思った。
読む前は実際にあった
「ネパールの王族殺害事件」
が根底にあるというのは知っていた。
これもアイテムとしては使われていて、非常に背景の重要な事件にはなっている。
でもじゃあそれが、ものすごく重要ファクターであって表に出てきて王族のあれこれを描く(そういう小説だと思っていた)と言う小説ではないのだ。
そして私はこの小説、大好きだ。
何かを私の心の中に落としてくれた、確実に。
最後に出た結論は甘いのかもしれない、それでも彼女が最大限にこの混乱の中で勝ち取った一つの結論だった。

・・・・
生きていくということは何だろう。
ジャーナリストをなぜ自分はしているのだろう。
そしてなによりも、なぜ自分がこれを報道するのだろう。
太刀洗万智はあらゆる場面でこれを突きつけられる、最初にこれを突きつけたのは彼女に情報をくれるはずの男だった。
なぜそれを報道するのかと聴かれて言葉に詰まる太刀洗万智がいる。

そしてスラムに生きる少年達のけなげで必死なことと言ったらどうだろう。
道案内を買って出るサガル、部屋の掃除をしてくれる男の子、路上で見かける子供達とこの貧しい状況の中、沢山の子供達が蠢いている。

ネパールと言う国の実情を語りながら、ジャーナリストになった太刀洗万智は偶然行き合わせた王族殺害事件に自分のジャーナリスト魂を震わす。
そして後半、一人の会ったことのある現地の男性が殺されて彼女の目の前に現れるのだった。
体にINFORMATION(密告者)という文字を刻まれながら。
果たして王宮の警護に当たっていたこの男は、王宮の殺害事件に加担していたのか。
そしてこれは紛れもない太刀洗万智の最初の特ダネになるのか。


人間があることを言ったりしたりする裏の行動というのもまた考えさせられた。

以下ネタバレ
・同宿の袈裟をきた日本人の僧侶が殺人犯人。
彼は全部の部屋の鍵を持っていた。
大麻をブツゾウに隠して日本に輸出していたのだ、それに加担していたのが、万智の会ったこちらの男。
彼がもう輸出しないと言ったので意見の相違から殺す。

・遺体を万智が見えるところまで引きずってきたのは、サガル。
彼は自分の国を哀れんでくれる欧米のせいで、子供達が増え(衛生環境が良くなったから)その代わりに生きるのに大変になった、向上の悲惨さを訴えたジャーナリズムにより働く場所を奪われたと思っている。
万智は、これに騙されそうになって、王宮の殺害事件とこの殺害事件を結び付けそうになったが、すんでのところで気がつく。

・ネタが欲しいジャーナリズム。
ネタはいったい何のためにあるのだろう、誰のためにあるのだろう。