2015.10.07



評価 4.7

ホテルのドアマンがひっそりとホテル内の部屋で殺された、サンタクロースの格好をしながら、そして破廉恥な姿で。
そこは、彼が特別に住まわせてもらった地下室の一室だった。
目立たない、友達もさして多くない、過去もよくわからない男のドアマン。
誰も注目していなかったこの男がなぜ殺されたのか。
誰が殺したのか。


ドアマングロドイグルの過去を探す旅で意外な彼の過去が出てくる。
意外すぎる、今現在地味な男が脚光を浴びていたと言う過去であった。

・・・
このミステリ、追う側の捜査官エーレンデュルの家庭の崩壊というのも描かれていて、彼と、精神がやや破壊されている娘のエヴァとの関係もまた大きな側面を持っている。
崩壊したエーレンデュルの家庭がなぜ崩壊したのか、なぜ子供達を彼は捨てたような形になったのか、そこをエヴァはぐいぐいと突いて来る。
またこれに付随して、
エーレンデュルの過去の今度は自分が育った家庭の話、が出てくる。
彼が雪山で弟と父と共に遭難して、弟が見つからなかった話がとても痛ましい。
そしてこれがエーレンデュルの心の傷になっているのが端々に見てとれる。

これプラス、ドアマンのグロドイグルの過去の家庭の様子が絡み合う。
グロドイグルは支配的な父に自分の才能を見出されはしたが、何事も押し付けられてはいたのだった。
姉がいるが、姉は逆に父が全く自分を振り向いてくれないと思っていた。
また、間に入ってくる、今現在係争中の、「父が子供を虐待したかもしれない事件」というのもまた入ってくる。
途中で、この父娘が出てくるのだが、父の車椅子姿がありその経緯がわかるにつれ胸がつまる。

まとめると

・グロドイルの育ってきた過去の家庭の話
・エーレンデュルの結婚し崩壊した家庭の話
・エーレンデュルの育ってきた家庭の話
そして
・エーレンデュルも関わっている、ある一つの父が子供を虐待したかもしれない家庭の話
と複雑にこれらの話が出たり入ったりしている。

心理を描いているのでそこは一気に読ませる。
一人の男の栄光の頂点、そしてそこからの脱落、その後の続いた人生。
深く考えさせられたのだった。

以下ネタバレ
・グロドイグルは、子供の時に天使の歌声を持っていて、世界的にデビューしようとしていた。
その矢先、よりによって大事なコンサートの独唱のはじまりに、声変わりが始まる悲劇があったのだった。
そこから表舞台から姿を消しドアマンになる。

しかし彼のレコードはとてつもない値段がついていた。
彼のレコードを集めるマニアが彼と会う約束をしていた。
当初このマニアが(逮捕歴もあったし)疑われるのだが、
実は、このホテルで働いているメイドの犯行だった。
彼女は、弟が作った借金を返すために目の前にあったお金に目がくらんだ。
そしてまた彼女がグロドイグルの最初の発見者だった。

・グロドイグルはゲイであった。
そのことを彼の父は認めようとせず、怒ったグロドイグルは父を階段から突き飛ばし車椅子の姿にする。

・友達に虐待された、と父が嘘の供述をしていて、完全に父が虐待の犯人だ、と捜査側では思っていたが・・・・
母が精神を病んでおり、ちょうどその時に脱走していた、なので、おそらくは子供と父が庇っているのはこの母親。
母親が子供を虐待した。

・エーレンデュルの弟は雪山で遭難した。
手を離した隙に埋もれてしまったのだ、間一髪でエーレンデュルは助かった。
この罪悪感から彼は逃れられないし、両親も腑抜けになってしまったという過去があった。